ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■女の60分。
朝、
「3年○組のまえだみどりですけど、Rちゃんいますか?」
と電話が掛かってきた。娘・R(9才)のクラスメイトである。僕はその子のお父さんとは昨日の日記にも書いたソフトボールの集まりで知り合った。オヤジ達が練習をしている間、子供達は子供達で一緒に遊んでいたのである。電話は
「今日、一緒に遊ぼう」
というお誘いであった。みどりちゃんからそんな電話が来たのは初めてだったので、オヤジの繋がりが子供の繋がりを広げたのだとしたらちょっと嬉しい、などと思ったりした。
午後に学校で遊ぼうということであったので僕が水筒などを持って一応付いて行った。息子・タク(6才)は先日からお腹の調子が悪く、また、午前中に鼻血を出したりと明らかに夏の疲れが溜まっているっぽいので仮面ライダーのDVDを流して留守番させておいた。
みどりちゃんはウチまでひとりでやって来た。彼女は一緒に学校の校門をくぐり、昨日遊んでいたあたりの石庭に駆け寄ると
「あ、あった」
石の上に無造作に置いてあった何か四角いモノをひょい、と取り上げた。
「それ何?」
「でぃーえす」
よく見たらそれはニンテンドーDSであった。
「もしかして昨日忘れたの?」
びっくりして聞いてみると「うん」と返事をする。
「なんで昨日のうちに取りに来なかったの?取られちゃってたらどうするの!」
よそさまのことながらのんびりし過ぎだろう、と口調を荒げてしまったが、
「でも昨日はソフトボールの練習の後は誰も来なかったでしょう?」
とみどりちゃんは弁明する。それは結果的にそうだったかもしれないが…。おそらくみどりちゃんは昨日、家に帰ってからDSを忘れたことに気が付いたが、怒られるのがイヤで親に言えなかったのではないだろうか。
学校に探しに行きたいけどそれも言えないので、昨日一緒に遊んだRと今日も学校で遊びたい、ということにしたかったのでは…そんな気がした。昨日はRの他にも何人か子供達がいたけれども、Rだけが同じクラスであった。同じクラスなら連絡網で電話番号が分かるし。
そんなことはRに分かるはずもなく、みどりちゃんも心配事が片付いたせいか、ふたりはブランコに乗り、遊び始めた。ブランコを揺らしながら大声でお喋りをして盛り上がっている。僕は木陰で涼んでいて聞いてないフリをして思いっきり聞いていた。
「あのねー、えみちゃんがみどりちゃんとは喋るなって言ってたよ!」
「えー!なにそれ!」
女同士の派閥争いの話だろうか。
「ケンジのペアってまゆちゃんになっちゃんたんだね!まゆちゃんかわいそう!ケンジじゃなくてせめてマサキだったらよかったのに!」
男の品定めだろうか。
「こないだケンジにおなか蹴られたよ!」
ケンジ最低。ていうか3年生とはいえ、女のトークって怖いなあ…。
遊び始めて30分ぐらいだろうか。
「あれー!いたのー?」
ユカリちゃんというやはり同じクラスの女の子がやって来た。ひとりで遊ぶつもりだったらしいが偶然R達を見つけて大喜びな様子。しかしユカリちゃんを見た途端、みどりちゃんが見るからにものすっごい不機嫌になってしまった。
あまりよそさまのお子様を悪くいいたくはないのだが、ユカリちゃんという子は結構自己中で、嫌っている子が多いのだという。みどりちゃんもそのひとりで
「わたし、帰るね。ばいばい」
「ええーっ」
なんと、あっさり帰ってしまった。30分ぐらいしか遊んでないのに…。一方Rは頭がお花畑というか、右から左へというか、みどりちゃんのように自己中なゴリ押しに反発できる強さがないというか、結果的に露骨に嫌う態度を表に出さないため、ユカリちゃんには好かれている。
ふたりはみどりちゃんが帰った後もしばらく遊んでいた。Rに誕生日のプレゼントをくれたりして、いい子だとは思うんだけどね…。そんな3年生女子の人間模様。子供とはいえ色々あるんだなあ…と、ちょっと涼しくなったのであった。
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08月28日(火)
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