ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■父帰る。
嫁実家にいた日曜日。
この日僕ひとりだけが帰ることになっていた。嫁は引き続きミシンをダカダカ走らせて息子・タク(6才)の入学準備、娘・R(8才)とタクは春休みなので引き続きじじばばに遊んでもらうのだ。
僕は、なかなか散髪に行けるヒマがなく髪が伸びていたので、ちょっと早めに帰って髪を切りに行こうかなあ…などと考えていたら、
「今日は別に遅くなってもいいんだろう?まあ付き合え」
ビール瓶を持った嫁父に捕まり、晩酌相手となってしまった。きゅぽんと瓶の栓を開けるのを
「ボクもやりたい!」
タクが目を輝かせる。
「お前と一緒に飲めるのはあと何年後だろうなあ…」
僕も嫁父も既に酔っ払っているのでもう数えられない。すっかりいい感じに酩酊し、腰に根が生えて落ち着いてしまってもう帰りたくなくなってしまったがそうはいかんざき。
「じゃあなー」
家族に別れの挨拶をし、外に出た。嫁母が車で駅まで送ってくれるのだ。ただ、ひとりで帰るのはとても寂しいので、玄関まで見送りに来てくれているRを強引にお姫様ダッコして
「せめて駅まで一緒にいてくれ」
「ぎゃははは!いーよー!」
強引に一緒に後部座席に乗り込んだ。3人で話しながらの車中、間もなく駅に着いた。今思い返すとここで嫁母に
「どうもありがとうございました。ではまた」
とお別れの挨拶をすべきであった。ただ、この時の僕は後部座席にいて、嫁母の後ろ姿しか見えなかったため、まず車から降りてドアを締め、嫁母の顔が見えるところ、すなわち運転席の窓越しに挨拶しようと思ったのだ。しかし、
ぶおおおおん。
嫁母、僕が降りてドアを閉めた途端、とっとと行ってしまった。Rにもお別れのひとことを言ってないのに…。嫁母はいつもこういうドライなところがある。もしかしたら僕が嫌われてるのかしらん。いや、僕に限ったことではない。例えば栃木の僕の母の場合。栃木に帰省していて、帰る日になると、母は
「あーもう帰るのー?寂しいねえー。お前はどうでもいいけど孫だけももう一泊してけばー?お母さん東京まで送ってやるからさー」
といつも名残惜しそうにするものだけれども、嫁母は
「あ、帰る?じゃ、また」
孫に対してもドライなんである。未だに掴めないお人だ…。
Rにはお別れの挨拶は出来なかったが、途中の車の中で、嫁母に気付かれないよう
「気をつけてね」
こっそりチューをしてくれたので幸せである。
髪も伸びたが鼻の下も伸びてしまった、というお話。
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03月28日(水)
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