ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■パン焼けるより「いじやける」(※)。
※「いじやける」→栃木弁で「じれったい」とかそんな感じの意味。

「パンを作る体験教室に行かない?Rと」

パン作り体験教室なるイベントに嫁が応募したところ、当たったのだという。当選のハガキをちらつかせながら僕に言ってきた。

「僕、パンなんて作ったことないけど」

それを教えてくれるための教室なんだろうけど、本当にうろ覚えの知識しかない。

1.材料としてなんかの粉を使うような気がする。
2.粉をどうにかして伸びたり縮んだりするカタマリにする。
3.カタマリで顔を作る。
4.焼く。
5.「新しい顔よー」と叫びながら投げる。
6.「元気百倍」とか言いだしたら成功。

確かそんな感じだったような。

「ていうか君達は行かないのかい」

僕と娘・R(7才)だけでは息子・タク(5才)が可哀想である。しかし

「小学生がやれる応募枠と幼稚園児の枠が違うのよ。両方申し込んだんだけど、小学生枠しか当たらなかったの。だからあなた行かない?Rと」

パン教室がなければケーキ教室にすればいいじゃない。おーっほっほ。じゃなくて。それでタクが納得してくれるか心配になった。

ところでやたらと語尾の「Rと」を強調しながら話す嫁。Rとデート出来るんだぞ、ありがたく思え、という思いがビシバシ伝わってくる。ふん、そんな嬉しくなんか…。

「え、パパとRちゃんが行くの?やったああ」

話を横で聞いていたRがこれ以上ないくらいのニコニコ顔で僕に甘えて来た。うーん。やっぱ嬉しい。悔しいッでもビクンビクン。そしてRと僕が盛り上がっているので当然タクもそれに気付く。

「なんの話?」

うーん。タクの分は外れたってことはいいづらいなあ…と思いながらも

「あのね、パパとRがパン作る教室に行くって話」

恐る恐る説明すると

「パンツ食べるの?」

どうやら「パン作る」→「パンツ食う」という空耳アワーになってしまったらしい。パンツ食う教室ってどんな変態レッスンだよ。

「いや、パンを作るってこと」

「たっくんもやりたい!」

「それが…」

嫁が応募したんだがタクの分は外れてしまったことを説明すると

「う…う…」

やっぱり半ベソになってしまった。

「すまん。僕らが行ってる間、ママに楽しいところに連れてってもらってくれ。埋め合わせは必ずするから」

とか、

「たっくんは前『わんぱく教室』(という幼稚園のイベント)でお弁当作りしたでしょう。それ、Rちゃんがすごく羨ましがってたからパン教室応募したんだよ」

嫁とふたりがかりでなだめすかしてようやく我慢してくれたようだ。パンをこねないだけに、ダダもこねない。なんつって。いや、ダジャレじゃなくてタクは良い子だなあ。

ところで僕とRが参加となると…おそらく僕らが一番出来ない親子なのではないだろうか。僕は料理ビタイチダメだし、Rもまだ2年生だし。他に参加してくる親御さんどころか、よく親の手伝いをしている小学生とかにすら負けると思う。ミソッカスにされてもおかしくないレベルかもしれない。

他の参加者さまの足を引っ張らないように練習しておいた方がいいのだろうか…。いや、体験教室の前に自分で体験しちゃったら参加する意味がないっていうか本末転倒っていうか。そういうズブの素人のために体験教室はあるのだ、とも思いたいし…。

Rの前で恥をかきたくないっていうのもあるし、なんかどうしていいのか分からないのでとりあえずパンツ食う練習を…って違う。

パンと新聞はよく似ている。

どちらもキジが大切!

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