ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■四苦八苦。しゅくはっく。
ゴールデンウィークの前半、栃木の実家に泊まっていた僕と子供達(嫁は仕事のため留守番)
2日の月曜日は僕も娘・R(7才)もそれぞれ普通に仕事と学校だったので帰らなければならなかった。ところが息子・タク(5才)の幼稚園は羨ましいことに休みで連休が途切れないステキホリデーであった。
そのため
「たっくんだけもう一泊するー」
タクは月曜日も自分ひとりだけ栃木に泊まりたい、と連休前から言い続けていた。
「そうかー。たっくんひとりでお泊りチャレンジするのかー。すごいなー」
一応その心意気や良し、とし、栃木の母にもその旨を伝えておいたのだが、正直絶対ダメだろうと思っていた。いくらひとりで泊まれる、と意気込んでいても、実際
「じゃあバイバイ」
と僕とRがタクから離れる瞬間になれば
「やっぱりたっくんも帰るー!」
途端に寂しん坊と化し、泣きじゃくって撤回しまくると読んでいたのだ。何せスイミングスクールで、タクをプールに送り出す時ですら
「むかえにきてね」
と泣き出すタクなのだ。Rでさえ幼稚園の「お泊まり保育」で初めて親元を離れて泊まる経験をした後で栃木の実家にひとりで泊まれたのだ。
だんだんと月曜日が近づくにつれ気が変わってくるのではないか…と踏んで毎日
「たっくん、月曜日はおばあちゃんと二人で泊まるんだねー。すごいねー」
と遠回しに確認をした。
「本当に泊まれるの?寂しくないの?大丈夫なの?」
このように露骨に聞いてしまうと最早脅しているのと変わりないので…。何回聞いてもタクの答えは
「うん、泊まるよ」
今までのタクだったら目がウルッと来たり少なくとも表情が曇ったりするものだったが、全く動じない。当日の月曜の朝になってもそれは同じで、いよいよ帰る時になり母の車で駅に向かう。僕とRは電車に乗り、母とタクが見送る。この時になっても僕は、タクは土壇場で「帰る」と言うだろうと思って、タクの帰り仕度も車の中に積んできたのだ。
しかし
「じゃあ母さん、タク、バイバイ」
タクが泣いて僕らを追いかけて来るに違いない、と踏んでいた駅での見送りシーンでも、
「ばいばーい!」
なんと笑顔で手を振って僕らを見送るではないか。成長したなあ、という嬉しさよりも驚きの方がでかく、Rと顔を見合せながら母とタクが乗った車が去って行くのを見守った。するとすぐ
「今どこにいるの?」
と母の携帯から電話してきたのは可愛かったが。
「まだ駅のホームにいるよー」
「たっくん、ひとりでお泊りできたよ!」
「いやそれはこれからだから」
泊まりはこれからだが、お別れシーンがひとつのヤマだとタクも思っていたのかもしれない。すぐさま嫁に伝えると
「嬉しいような寂しいような」
という母が息子を思う複雑な気持ちが返ってきた。家に帰ってもやはり一番うるさいタクがいないと、
「たっくんがいないと、しずかでさびしいねー」
Rもこのようなことを言い出すほど、家の中の空気がシャッターだらけの寂れた商店街のような感じであった。夜中、
「じゃまあ景気づけに一発」
「やだよ!」
嫁に断られたのはいつも通りであった。
肉親的な息子がいない代わりに肉棒的な息子を提供しようと思ったのに。
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05月04日(水)
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