ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■哀。あなたとふたり。
娘・R(7才)と息子・タク(5才)が嫁実家に泊まりに行く日。
僕は出勤なので朝にお別れである。
「さよなライオン!」
「さいならっきょ!」
「ぽぽぽぽーん!」
思い思いに激しい別れの挨拶する僕ら。その日は早く帰って来れたので、Rとタクもまだ寝ていないだろうと思い電話してみた。
「おう、かじりんか」
嫁父が出たのでうるさいのが面倒かけてスイマセン、と言うと
「もしもし〜?」
嫁譲りの、電話口になると高い声になるかわいこぶりっ子ボイスでRが出た。
「きょうねえ、れすとらんでごはん食べたんだよ〜あとね〜公園で遊んだんだよ〜あとね〜…」
延々と今日の出来事を語るRの後ろからタクの叫ぶ声が聞こえてくる。
「たっくんに変わってくれるかい?」
と言うと
「ぱーぱー!」
ぼぼぼぼ、と音が割れまくったシャウトを浴びせるタク。耳が割れるかと思った。今日はなにしたんだい?と話すと
「おじいちゃんとオセロした」
「そうか。よかったねー」
「じゃ、切るから」
ガチャン。トゥー…。うおお、何で急に事務的に切るんだ。ま、全然ホームシックになってないようなんでよしとするか…。と、電話を置くと、ウチの中には嫁ひとりと僕ひとり。
狭い貧乏長屋なのに、子供ふたりがいないだけで凄いガラーンとしているように思える。Rとタクがふたりともいない、というのは初めての経験である。嫁とふたりきりなのがなんかこう…こそばゆいと言うか、新婚でもないのに今更…というか、照れ臭くなった。
「あなただけにゴハン作るのって、なんだか気が抜ける」
嫁も少なからず違和感があるようだ。そして
「昔はふたりで飲み行ったもんだけど、子供できてからは行けなくなっちゃったし。でも今日は行けるよね」
なんてことを言う。そんな頻繁でもないけれど、子供が出来る前は嫁と地元飲みをしたものである。
「お前、飲み行きたいの?」
「いやいや、違うけど、昔、○○って店よく行ったよね」
「そこ、とっくに潰れちゃった」
「じゃあ××は?」
「そこはオカマバーになってた」
「はー…行ってないから全然分からなくなっちゃった」
嫁は寂しそうに言う。僕も元々酒好きでもないのですっかり飲まなくなった。地元で最後に飲んだのは、秋頃、店名に惹かれて行った「EKD(江古田)48」というキャバクラだろう。48人もいなかったけど総選挙はやってた。
「僕も全然行ってないよ」
勿論嫁には言えぬ。
しーんとした部屋に嫁とふたりきり。なんだか図らずもしっぽりとした雰囲気になってきた。これはみだらな行為突入のきっかけとなるのか。子供達いないし久しぶりにものすんごいことやれる…と思ったが別にそんなことはなく、嫁はとっとと寝た。
うう…子供達よ、早く帰ってきてオクレ。ひとりで寝る布団の冷たさよ。もう子供達の賑やかさとぬくもりがなければ生きていけない体になっていたんだなあ。
こうも寂しいと、子供もうひとりぐらい欲しい…と思ってしまう。今宵作成するチャンスなわけなんだが嫁は既に寝息を立てているので叶わぬ夢である。
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03月31日(木)
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