ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■愛のパーマネントウェーブ
部屋のひとつが娘・R(7才)に占領されていた。

「じかんです。おしまいです。へいてんです」

と書かれた紙が扉に貼られていて、入ろうとすると

「入っちゃダメ!」

と怒られる。どうやらRがお店屋さんごっこをやろうとしているらしい。やがてRがニンマリした顔で扉の紙を裏返すと

「いらっしゃいませ。あたらしくできた びよういんです。 きてください」

Rが始めようとしているのは美容院ごっこのようだ。

「いらっしゃいませ〜。美容院で〜す。誰か来て下さ〜い」

うろうろと客寄せをするR。しかし嫁も僕も息子・タク(5才)も全然興味を示さなかった美容院はこの街に多過ぎるもののひとつ。空きテナントがあると次に入るのは美容院かラーメン屋か不動産屋かと言われているほど。街中の美容院が全てソープなランドになったら吉原を超えるのに、と僕は常々思う。

だから美容院は今更過ぎなのだ!だからRにもノーリアクション。この街の人間の興味を引きたいならメイド喫茶でもオープンするんだな!と厳しい態度でいると、

「もう!だれか来てよ!」

案の定Rがブチ切れ、僕の袖を引っ張るのでしょうがないのでお客になることに。Rに占領された部屋に入ると、Rがイメージした美容院なのだろうが、おもちゃでぶちまけられていた。

「ち、散らかしたなあ…」

「はーい、じゃあここに座ってくださーい」

Rは有無を言わさず僕を椅子に座らせる。そして首にマフラーを巻かれた。美容院でのテルテルボーズ状態を再現していると思われる。そして

「今日はどんな髪型にしますか?」

といっちょまえのことを言う。

「うーん。じゃあ戦場カメラマンみたくお願いします」

「いつも帽子だからわかんないじゃん!」

「じゃあかっこよくお願いします」

「はーい」

Rはおもちゃの扇風機を持って来て僕の頭にぶわわわんと風を飛ばす。

「…それ、何してんの?」

「髪の毛かわかしてます」

「まだ濡らしてもないのに?」

「そうだった。ぎゃははははは」

まるでチープなコントのような美容院ごっこを続けていたが、

「ほらほらほら、ゴハンですよ!」

嫁が早く食べろと鬼のように急かしてきたので終わりになってしまった。そしていつまで経っても部屋を片付けないため

「こんなに部屋散らかして!ちゃんと片付けろ!」

僕にも怒られることになった。Rは散らかしたつもりはなく、あくまで美容院の内装にしたつもりらしかったが…。

美容院だけに部屋スタイルってか。

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02月27日(日)
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