ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■歯の治療は痛いけど、歯科たない。なんちて。
娘・R(7才)が池の鯉みたいに口を開けていた。

「パパ、見て!」

Rは下の前歯を触りながら

「ぐらぐらするの」

そろそろ歯が抜けそうなのよ、と言った。

「えーーっすごいな!あっ。後ろからもう歯が生えてる…!」

乳歯が抜けるのが待ちきれないみたいで、既に歯茎から新しい歯が顔を出しているではないか。

「すごいねえ。もう大人の歯に生え替わるんだよ」

「うん!」

よかったな、とRには言ったものの、内心は喜びと言うより焦りであった。なんだろう。この焦りと不安は。ちっこいRが朝起きたらムチムチプリンのパイオツカイデーなギャルになってた、みたいな感じだろうか…、いや、ちょっと違うような…。

え、もうそんな成長しちゃってるの、みたいな感じである。今はパパパパとなついてくれるRがいつかは

「オヤジくせーし。死ねし」

オヤジを毛虫の如く蛇蝎の如く嫌う時が来る。歯の生え替わりという分かりやすい成長の証を見せられて、その時がもうすぐそこまで来てるんだよ、と宣告されたような気がしたのだ。

夜中、子供達も嫁も寝た後でひとり考える。子供の成長なんてあっという間。いずれ一緒にお風呂も入れなくなるし、一緒に寝られなくなるし、一緒にお出掛けも遊ぶこともヤダとか言われるようになるし…親って寂しいなあ…と悶々としてると

ガタガタガタ。

部屋の扉が開いた。Rが起きたんである。Rは夜中目が覚めると、必ず僕がいる部屋までやって来て迎えに来るんである。

「また目が覚めちゃったのかい?」

まだ半分寝ているようなポヤーンとした顔で「うん」と答える。

「こっちおいで」

と手を広げると僕にぎゅっと抱き付いてきた。カ、カワイイ。これっすよこれ。このパパベッタリの可愛さがフォーエバーならいいのに…。

「じゃ、いっしょに寝ようね」

Rをだっこしたままそのまま寝床へ。再び夢の世界に入っていくRの寝顔を眺めながら

「パパ好きか?」

つい押しつけがましいことを口走ってしまったら

「大好き」

と答えてくれた。

「パパはいつまでもRのこと好きだからな〜」

この暗さなら言える臭いセリフを吐く僕。

歯が抜けそうなRに歯が浮きそうなことを言ってしまった。

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02月18日(金)
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