ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■イッヒ フンバルト ベンデル
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朝目が覚めると娘・R(7才)と息子・タク(4才)はまだ眠っていた。

その寝顔をしばらく眺めているとRの目がぱちりと開いた。小学校は運動会の振り替えで休み。なのでいつもより遅く起きたR。にこっと笑って僕に何かをして欲しそうな顔をする。

「ほらよっ」

僕は手を引っ張ってRを起こし、ぎゅーっとだっこをする。Rはこれをして欲しかったのだ。Rも強く僕を抱き返す。そう。僕らは、目と目で通じ合う〜。か〜すかに〜色っぽい〜。

しばしガッチリと抱擁を交わす。こうしてベタベタしていられるのもどのくらいなのだろうか。娘のぬくもりを感じながら寂しさも同時に味わう。冬に向かう晩秋の小春日和のようだ。

やがて抱擁を解き、「ん」とRの顔を覗き込む。Rは僕から離れてトイレに向かって行った。そうだ。それでいい。朝起きたならトイレに行かなければならぬ。これも目と目で通じ合った。

僕も着替えを始める。着替えの後、トイレに入ろうとしたらまだRが入っている模様。多分大自然が呼んでいる(※)のだろう。

※「自然が呼んでいる」とはいわゆる「小」を、「大自然が呼んでいる」とはいわゆる「大」を表わす婉曲的かつトレンディな表現である。

「大丈夫か〜」

と声を掛けると

「うーん」

中から今まさに大自然に呼ばれまくっている最中、みたいな声がした。

「よかったねー」

Rはもともと便秘気味なので、めでたいことなのである。しかし時間が掛かりすぎた。5分待てど、10分待てど

「ホントに大丈夫か〜」

「う〜ん」

出てるんだか出そうと闘ってるんだか、まったくトイレの扉が開かない。そんな天の岩戸状態に僕は次第に焦ってきた。ふんばりすぎてぶっ倒れやしないかという心配もあるのだけれども、最大の焦りは…

「僕も大自然に呼ばれちゃったんだけど…」

このことであった。ウチはトイレが2つも3つも付いているお屋敷ではない。そしてこれ以上待っていると会社に遅刻する。せっかく久しぶりに大自然に呼ばれたRに対して

「とっとと出ろ!」

とせかすのは親としてどうよ、みたいな気がしたので残された選択肢はただひとつ。我慢&駅のトイレまでダッシュである。

「じゃ、行ってくるからね〜」

「う〜ん」

R、まだふんばり中のようである。ウミガメの出産みたいだな…。Rは僕と目と目で通じ合う。

しかしお通じの方はなかなかタイミングが合わないようである。

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09月30日(木)
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