ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■ネバースターティングストーリー
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「パパ、みてみて〜」

娘・R(6才)がチラシの束をバッサバッサと持って来た。

「なんだいそれは」

「おはなし、つくったの」

それはチラシを束ねて作った、Rの「本」だった。表紙と思われる第1ページめにはたくさんの絵と、公園で拾ったBB弾がセロテープでくっつけられている。あとは…これはリュウノヒゲの実だろうか、そんなものまでデコレイションされており、なんだかアフリカ部族に伝わる呪術書のようなおどろおどろしさを醸し出していた。

しかしRにはそんなことは言えず、

「一生懸命作ったんだね」

褒めるしかなかろう。

「ねえ、よんで」

「ああ、うん。はいはい」

Rが作った物語か。どんなものだろう。僕はRのたどたどしい文字を追った。

「じゃあ読みます。えーと、『ようちえんのおはなし』。これが題なんだね」

「そうだよー」

「あるひ…」

ある日、と書かれたところで最初のページは終わっていたので、次をめくってみると…真っ白だった。

「終わりかーい!」

「ぎゃははははははは!」

Rのお話は真っ白。まるで君のように。そう。いつまでも純白の汚れを知らない女の子でいて欲しい。そして純白といえば…ウェディングドレス…ってうわああああああ!

恐ろしいことを想像してしまった。いつかはその日が来るんだよなあ…やっぱり…。Rがいつの日か結婚してしまう。そのことを考えると子供の頃ノストラダムスの人類滅亡予言に怯えていた時のことを思い出す。感覚的にはそれに近い。

僕はその時どうすればいい?Rがいない人生などもう終わったに等しい。Rが白無垢なら僕は死に装束でも着てやろうかしら。

「Rちゃん、このお話の続きはどうなるんだい?」

「わかんない」

きっと1ページ目を作っただけで飽きたに違いない。

「最後は『めでたしめでたし』ってなるように、なんか考えてみなさい」

「うん」

「それとあと25年ぐらいは彼氏作らないでね」

「え?」

「いや、パパのひとりごとだ」

だってどこぞの馬の骨連れて来た日には…まだ心の準備が出来てないので、

僕は死にたし死にたし。

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10月28日(水)
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