ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■一生で一番生と死を考えた日。
僕が風邪でぶっ倒れて寝臥せっている時
仕事から帰ってきた嫁は
「何やってるの」
と、吐き捨てたのみだった。えらい仏頂面だった。
嫁は寝る寸前に僕に
「ワタシは明日の産婦人科の定期健診が心配でしょうがない。
また赤ちゃんが動かなくなっていたら、と怖い。
なのにアナタはゲーセン行って遊んでたり、夜はネットしてるし、
ひどいつわりと不安の中、一人寂しく寝るしかなかった。
だからワタシは今、自分の心配しかできない。
アナタの風邪は自力で治して」
という恨み言をメールで送った。
…悪かったけどさ。
何でひとこと「一緒にいて」と言ってくれなかったんだろう。
詫びの気持ちと共に寂しくなった。
2週間ほど前にも、僕がバカをやったせいで
嫁に対してもの凄い精神的ショックを
与えてしまった。(詳しくは書かない)
そして、嫁は去年の夏に一度身籠ったが、8週目でおなかの中の子は
動かなくなってしまい、そのまま…という過去がある。
ちょうど、今もそれぐらいの時期だ。
いくつもの不安材料で頭がはちきれそうだった。
次の日、定期健診の朝、嫁の表情は不安にまみれていた。
僕は会社に出かける時、
「きっと、うまくいってるよ。頑張れ」
と、一発励ましてみた。しかし、嫁の表情がやわらぐことはなかった。
もともと僕も嫁も徹底した悲観主義者なので、
言った僕自身も実際は「またダメなんじゃないか」という気持ちが大きかった。
そんな取って付けたようなセリフでは嫁の心には届かなかっただろう。
仕事中、気になってしょうがなかった。
今回もダメだったら、嫁はおなかの中の子と共に死ぬかもしれない。
二度も失敗たら自分は母として、人として価値がないのだ、と。
それに、手術して赤ちゃんを取られたくない。
ひとりで天国に行く赤ちゃんがかわいそうだからワタシも一緒に行く。
なんてことを泣きながら言っていたこともあった。
そうしたら残された僕はどうなるのだ。
…後を追おうか。
午後、嫁からメールが来た。
産婦人科で、元気な心音を聞かせてもらった、とのことだった。
僕は電話した。
「よかった…。不整脈はなかったか?」
「そこまで分からないよ」
心音のリズムがサンバを刻んでようがドドンパだろうが
ブレイクビーツだろうが2ステップだろうが、
とにかく今はいいや…。
僕と嫁を親に選んでくれた子供に感謝する。
産まれてきたら、ふやけるほどのキスをしよう。
02月05日(水)
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