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エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■思い出がハードディスク一杯になるまで。
「おい、今デジカメ持ってるか?貸してくれない?」
会社で隣に座っているT係長が頼んできたので
カバンからデジカメを取り出して
「いいっすよ」
と差し出した。
「ちょっと急に資料を作らなくちゃならなくなってね…。
今日一日借りてていい?」
「かまいません」
「そうか。ありがとう。助かった」
T係長は僕に礼を言った後
「しかし…デジカメいつも持ってるのか?
変なもん撮ってるんじゃないの〜?」
にまあ〜と笑った。
「ははは、まさか。そんな田代まさしみたいなことはしませんよ。
あ、ちょっと係長が使いやすいように設定してから渡すんで」
僕はぴっぴっぴっとデジカメをセッティング。
…してる振りして
「嫁のナース姿コスプレ写真」
「近所の美少女Rちゃん写真」
「『シャ乱ピュウ』という風俗店の看板写真」
「ゲーセンのオタク写真コレクション」
などを素早くメモリから消去するのであった。
ドキドキドキ…。
はい。おっしゃるとおり変なもんばっかり撮っています。
T係長にデジカメを渡した後、
妙に焦る気持ちが起こっているのに気付いた。
ちょうど、ケータイを家に忘れてきたみたいな。
係長の言うとおり、僕はいつもデジカメを持ち歩いている。
美しいもの、面白いもの、変なものを見つけたら
速攻で撮っておきたいからである。
もう二度と再現されることはないその光景、被写体を
僕は出来るだけ記録に取っておきたいという気持ちが強い。
デジカメを持ってない今、その感動的な瞬間が起きてしまったら
どうしよう…悔しくてしょうがないのではないか。
だから僕は焦っているのだ。何時の間にかデジカメは
肌身離さず持ち歩かなければならないモノになっていた。
早く返してくれないかな…。
夕方、T係長から電話があった。
「ゴメン。デジカメ落しちゃった」
ゴーン。
…全治三週間となった。
11月15日(金)
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