ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■「次のことなんて考えられない」と嫁が言った。
会社を午後休んで嫁の病室に行くと、
既に手術は終わっており、嫁は落ち着いた感じで起きていたので
ちょっと拍子抜けした。
ドラマだと、「手術中」のランプが消え手術室の扉がばん、と開き、
医者がツカツカと出て来て、横たわった嫁は病室へと運ばれて行く。
待ち構えていた僕が医者に近寄ると
「成功ですよ」と言ってくれたり首を横に振るだけだったり。
(縁起でもねーなおい)
病室に戻った嫁はやがて麻酔が覚め、まぶたを開ける。
始めは霞がかった視界が徐々に晴れ、嫁は自分を見下ろす人影に気付く。
完全に視界が開けるとそれは…
「さんぺいです」
とモノマネする僕の姿であった。
…こんな感じの感動の再会を予定していたのだが。
「よく頑張ったなー」
僕はとにかく嫁の頭を撫でた。
「子供、もういなくなっちゃった」
嫁は腹をさすった。
「また、来るよ」
僕は答えたが嫁は無言のまま帰る支度をし、病室を出た。
外に出る途中、
「ここで手術したんだよ」
嫁が指差した手術室は、改造人間を作ってるショッカーの
アジトのようなおどろおどろしさが漂っていた。
全く関係のない僕が見ても怖いのだから
嫁の怖さと覚悟は相当なものだったに違いない。
帰り道、
「チョコパフェ食べたい」
と言うので、アホなくらいでかいパフェを出す喫茶店に寄ったら
あっという間に平らげて僕のカツカレーにもちょっかいを出した。
少し元気が出てきたのか?
しかし家に帰ってから嫁がしんみりとしてもう一度
「いなくなっちゃった」
と腹をさすった。
「また、呼べばいい」
僕は答えた。嫁はまた無言のままだった。
ここからまた出発。
08月03日(土)
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