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Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review @ Tokyo
by Niseko-Rossy Pi-Pikoe
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■泣きながら北に馳せゆく塔などのあるべき空の気配ならずや 宮沢賢治
思わず「ひゃあ」と声を上げたくなるような「感覚」である。ただし、またそれはいかにも十代半 ばすぎの少年らしいとも言えるナイーヴさを伴ってもいるが(関根正二の絵でも観ているようだ)。 しかも重要なのは、これが意味不明の妄想や言語上の錯乱などではなく、読む者にもはっきり「ああ、 分かる分かる」と、その表徴するイメージが伝わってくる点だ。十一月の夕暮れ、あるいは二月の早 朝、いずれも曇天だろう、雲は低く、肌寒さがつのっている......たしかにそんな空には何かがあっ た、そうかあれは「泣きながら北に馳せゆく塔」だったのだとそう、読む者に納得がゆく種類の、 これは"幻視”なのだ。そしてそれは必ずしも、ランボオのようなハシッシュやミショオのようなメ スカリンも必要としなければ、地質学的、気象学的、鉱物学的用語も、植物学的、天文学的、地球物 理的用語も必要としない。逆に、さまざまな術語・専門用語のアクセサリー的ファッションから詩や "幻想童話≠ェ生まれるという勘違いをしているような輩なら、むろん現在の日本にもいくらかはいるだろうが。
山口泉
06月13日(火)
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