ID:7590
Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review @ Tokyo
by Niseko-Rossy Pi-Pikoe
[851373hit]

■上原彩子 ピアノ・リサイタル
東芝EMIから出た最新作『プロコフィエフ作品集』のピアノに片腕ついてうつむいているジャケを見ながら、どういうお嬢さんなんだろうと思っていたが、ステージで初対面した上原は子どものような笑顔で、おなかには赤ちゃんが宿っているようだった。そこで母性がどうこう言ってはならんのだけど、おなかの赤ちゃんも聴いているんだな、と、やはりおれはこのグリーグの素晴らしい演奏に思うんだよ。上原は言われたかないと思うだろうが。そして、妊婦であることがなにか演奏をゆがめているところなぞ微塵も感じさせない、彼女の演奏だったことは強く書いておく。

プロコフィエフのピアノ・ソナタというのは、そうか、なるほど強鍵奏者たちの歴々の名演奏に飾られてきたのだ。おれなんかそういう名演をCDで聴いてきては、「あ、そう」てな程度よ。今まで感動したことないよ。ごりっぱねー、と思うだけでいたの。ところがねー、この日の上原の演奏は真っ白の状態から一瞬ごとにプロコフィエフの楽曲にひそむ閃きが次々と立ち現れてきているのがヴィジュアルに感じられるようなもので、ぼくは演奏を聴きながら時間を忘れて上原と一緒に歌った。歌ったというのはもちろんメタな表現で、上原と一緒にめくるめく旅を体験したとも言える。プロコフィエフのピアノ・ソナタは重層的で奥が深い。フォルテをガツンと決めればプロコになってるなんて、ないから。

02月11日(水)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る