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羽積風narration
by 汐 楓菜
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■限界はどこなんだ
母に会ってきました。えーっと…たぶん三年ぶり。
昨日、電話が掛かってきて「大事な相談があるので彼氏と一緒に
来て欲しい」と。
「何の話かは知らんが結婚してるわけでもない私の彼氏を、しょ
うもない汐家のゴタゴタに巻き込むな」と言って、私一人で会いに
行きました。
結局のところ金が底を尽きそうなので何とかしてくれ、という話。
母は持ち家に一人で住んでいるのですが、その家を売り払って少
しのまとまった金を作って母の賃貸の住処を見つけるとか、私(と
彼氏)が母の家に戻って光熱費を入れるとか、老人ホームのような
ものをそろそろ見つけておいてくれとか、まぁなんかいろいろです。
当然、不動産手続きは全部、私だ。不安だなんていうのは甘えて
いるか…もう25歳だもんな。
こないだ父に会ったときも「俺が倒れた時のこともそろそろ考え
といてくれよ」とチラッと言っていましたが。
なんですか。
私の周りには30過ぎた大の男がマンションの頭金を親に出しても
らっただとかいう話も腐るほどあるというのに、汐はもう親の面倒
を看なくちゃいけないですか。
などと愚痴の一つもこぼしたくなりますよ。
そしてそんなレベルの世間の男に、どうやって心を開いて信頼し
て恋愛して結婚しろと?(笑)
***
母は昨日布団で足がもつれて転んだとかで、目のふちから血を流
してガーゼを貼っておりました。
何度か、ときどき記憶がフト飛んでは突然「おかあちゃーん、お
かあちゃんどこー?」などと叫び、母の母(数年前に他界)をキョ
ロキョロと探しておりました。
風邪でもないのに中毒になってやめられないパブロンを二時間ご
とに服用していました。力ずくで制止もできず見る私。
「そうだ、私を殺せ!今すぐ刺せ!」などと、いきなりスゴイ形
相で迫ってきたりしてました。
つい最近まで呪いがかった声で「お前、殺す」と電話をしてきて
いたので、いつ「よし、今二人で死のう」と襲い掛かってくるかと
思うと恐怖でしたが幸いそこまでは行かず。
母が二十歳になったときに父親(私の祖父)から記念にもらった
という真珠の指輪をもらった。
楓菜が二十歳になったとき、ちゃんと成人式用の着物を作るとか
してやりたかったけれど何もできなかったから、と言う。
私が二十歳になったときは既に母の家を出ていたし、母も金銭的
にそれどころではなかっただろう。
母が父との初めてのデートでもらったという縁起の悪いネックレ
スも「こんなもの持ってるのもムカつく」と言ってくれた。
***
母は言う。
数年前に父から金を貸してくれと言われたのを、既に父の家賃を
立て替えたりしていた私は遂にキレて断ったことがあるのですが、
私が金を貸さなかったことを父は怒っていたと。
母の前ではそれを怒っていたけれど、老後の面倒を看て欲しいか
ら楓菜の前では頑張ってニコニコとするだろう、と。
私に金をたかる前に、父の兄に連絡していたが「あの野郎、金額
も訊かんうちに断りやがった!」と怒って縁を切ったのだと。
…そうか。
やめてよ、お母さん。
私は偶然にも二週間前に父と会ったばかりで、父は本当にニコニ
コと温和だったんだ。少しだけ、心を開いてみたんだ。
***
家族のことは今降って湧いた問題じゃなくて、汐が高校の頃から
ずっと抱えてきたことだ。
父も母もほとんど働かない人で、汐が高校のときは既にバイト代
で家賃や生活費も出していたし、家族間の人間関係もメチャクチャ
だったし、自分のせいでヤクザに追われた父は私を残して一人で逃
げたので私は住処を失ったりした。
私は年数が経っても忘れないし許さない。
けれど、見捨てることもきっとできないだろう。
愛想笑いしながら面倒を看るんだ。
相変わらず仕事のことで真剣に参ったりするけれど、本当は会社
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06月27日(金)
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