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活字中毒R。
by じっぽ
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■「1本のゲームで名曲は1曲でいいと思ってますよ」
『桜井政博のゲームについて思うことX』(桜井政博著・エンターブレイン)より。

(『大乱闘スマッシュブラザーズ』や『星のカービィ』シリーズの生みの親、桜井政博さんが『週刊ファミ通』に連載されているコラムを単行本にした本から。巻頭の作曲家・植松伸夫さん(『ファイナルファンタジー』シリーズの作曲など)との対談の一部です)

【桜井政博:最近は映像の表現がどんどん進化しているので、音楽の主張とかみ合わなくなってきているのかなと思います。メロディーを重視して音楽が前面に出すぎると、映像と食い合ってしまいますよね。

植松伸夫:環境音のような音のほうが、いまのゲームと合ったりするんですよ。でもそれって、音楽家にとってはあまりおもしろいものではなかったりするけど。

桜井:ホントそれ、『スマブラX』を作っているときはわたしもすごく悩みました。いろいろな方に曲を作っていただいて、できた曲を映像にあてがおうとすると、ゲーム画面には合ってもムービーにはあまりそぐわない。曲自体は良いし、映像もちゃんと作られているのに、お互いの主張が食い合ってしまうんです。

植松:ここは映像を立てるべき、というシーンでは音楽は一歩引くべきだろうし、その逆もしかり。そのメリハリが必要なんだろうね。

桜井:音楽を主張しようっていう方向性はキツイかもしれませんね。

植松:だから僕は、1本のゲームで名曲は1曲でいいと思ってますよ。映像とかセリフを前に出しておいて、ここぞというところで美しいメロディが流れれば、余計に浮き立つというか印象に残るじゃないですか。

桜井:それですね!

桜井:『FF(ファイナルファンタジー)』の音楽を作っていたとき、何かテーマはあったんですか?

植松:テーマはとくになかったよ。でも1作目を作るとき、音楽は有名なアーティストに頼もうって話になってたんですよ。だけど坂口さんが「植松とやりたい」といってくれたおかげで、こうしていられるわけです。

桜井:もし別の人が『FF』の曲を作っていたら、ゲーム音楽の歴史が変わっていましたね!

植松:『FF』がたまたまヒットしてくれたので生き延びられました……。

桜井:たまたまではないと思いますよ。やっぱり『FF』の音楽は「なんていい曲なんだ!」と思わせるだけの力を持っていましたし、だからこそいまはあると思うんですよね。

植松:でもね、偶然というのは確かにあるんですよ。ニーズがあるところに、僕たちがポンと良いタイミングで出せたという偶然。そこで、自分たちの作ったものが評価されるという感動を一度でも味わってしまったら、もうこの仕事はやめられないじゃない(笑)。

桜井:自分でゲーム音楽を企画する場合、とくに『星のカービィ』を作っていたときに大前提としていたことがありまして。それは「歌えるメロディーにすること」です。『カービィ』は小さい子が遊ぶゲームだから、という理由もあったんですが、自分で歌えて、なおかつ心に残ること。カービィのデザインコンセプトが「誰でも描けること」という部分まで含めて、それが大事なんですとスタッフには言っていましたね。

植松:昔のファミコンって、そういうゲームが多かったよね。口ずさめるようなメロディーが。

桜井:そうでない曲を作るのが難しいのかもしれませんけれど。あと、ゲームをやっていて「これは良い曲だな」と思う基準は、自分の好き嫌いよりも、まずゲームに合っているかどうか。それでいて、遊んだ記憶として振り返ったときに良い曲であるかどうか、ここが重要です。

植松:なるほど。

桜井:RPGなどで多くの人は経験したことがあると思いますが、ついウトウト寝てしまったときに、曲がものすごくループして頭にこびりついてしまう。それでメロディーを覚えられたとしても、曲としては良いものではないかもしれない。でも、そのときのゲームの記憶や経験自体が良いものであれば、その曲も良いものになりえると思うんです。


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05月31日(日)
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