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活字中毒R。
by じっぽ
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■絵本『ぐりとぐら』ができるまで。
『ダ・ヴィンチ』2008年6月号(メディアファクトリー)の記事「『ぐりとぐら』ができるまで。〜中川李枝子と山脇百合子の物語〜」(取材・文:岡田芳枝)より
(『ぐりとぐら』は、文章を中川李枝子さん、絵を山脇(大村)百合子さんが担当されているのですが、お二人は血がつながった姉妹。中川さんは1935年生まれ、山脇さんは1941年生まれ。お二人は『いやいやえん』でデビューされたのですが、デビュー当時中川さんは「みどり保育園」で保育士として働きながら同人誌グループに参加、山脇さんは高校生だったそうです)
【その後、李枝子さんは月刊雑誌『母の友』(福音館書店刊)に『たまご』という作品を掲載し、再び挿絵を百合子さんが担当。その作品を読んだ福音館書店の松居編集長より「これを絵本にしませんか?」と声がかかる。そうして出来上がった絵本が『ぐりとぐら』だ。
中川李枝子:『たまご』も『ぐりとぐら』もね、みどり保育園のみんなのために書いたお話だったんです。みどり保育園の子どもたちは『ちびくろさんぼ』がだーい好きだったの。遊びの時間は全部ちびくろさんぼゴッコになっちゃうくらいにね。で、ある日、園長先生が、家から材料を持ってきてホットケーキをつくってくださったら、子どもたちは大喜び! まず先生が焼いてくれたことが嬉しいでしょ、そしてそれをみんなで食べるってことがなにより嬉しい。嬉しかったから、お家に帰ってお母さんたちにも話をして、そうしているうちに、分厚くてとっても大きい、立派なホットケーキを食べたことになっているのよね。本当は貧弱なホットケーキだったのに(笑)。それをきいて、みんなに大盤振舞したいなって思ったの。それで、ちびくろさんぼの向こうを張って、大きなカステラにしたんです。だって、カステラのほうが材料がいいし、高いでしょ(笑)。あと、大きな大きなカステラにしたかったから、主人公は小ちゃい野ねずみにした……というわけなんです。
ぐりとぐらという名前は、フランスの絵本に登場する歌から思いつきました。黒猫と白猫がいろんな冒険をするお話で、そのなかに、グリ、グル、グラ……って歌を歌うシーンがあるんです。保育園でその絵本を基にした紙芝居をすると、そこでみんながとても盛り上がるのよね。それで、ぐりとぐら。
一方、当時、上智大学の3年生だった百合子さんは、絵本にするにあたって新たに絵を描き下ろすことに。
山脇百合子:まず最初に、上野にある科学博物館で、今泉先生という方にねずみの標本をたくさん見せていただいたのだけれど、そのなかにオレンジ色のねずみがいて。ああ、このねずみがいいなあと思って、それを描くことにしました。洋服は、『たまご』の挿絵を描くときに「二本足で立っていて洋服を着ているねずみにしてもいい?」と姉に聞いたんです。絵はね、お話が面白かったから、描きやすかったですよ。
トンガリ帽子のような赤い屋根の家のなかには、あたたかそうな暖炉にたくさんのハーブや植木。そして、森や海にはたくさんの動物たちとの出会いや発見……。おふたりがこうして『ぐりとぐら』を生み出して、今年で45年。日常を楽しく面白く工夫して暮らす二匹の世界は、まったく古びることなく、いまも絵本のスタンダードとして世界中で愛され続けている。
山脇:お話が単純明快だから……っていうと失礼よね(笑)。練りに練った末の単純明快だから、いいんじゃないかしら。
中川:そうなの。単純明快を一生懸命つくるのよ。きっと、たくさんいい作品を読んできたから良かったんじゃないかと思うの。石井桃子さんがね、「書くということは、教わるものではなく、本をたくさん読んで、そこから自分で掴み取るものなんですよ」とおっしゃっていたんですけれど、私は岩波少年文庫のおかげで、それを掴みとれたんじゃないかなと思います。あとね、教訓を込めてはいけないの。本で何かを教えようなんてしてはいけないと、私は思うの。楽しめれば、それでいいのよ。
山脇:でも、読む人によってはわからないわよ。「やっぱり大掃除はしなくちゃいけないというメッセージが行間に溢れている」なんて思う人がいるかもしれないもの(笑)。そのときは……仕方がないわよね。その人がそう感じたんだから(笑)」
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03月16日(月)
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