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活字中毒R。
by じっぽ
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■鈴木慶一、『初音ミク』を語る。
『ユリイカ 詩と批評』(青土社)2008年12月臨時増刊号の「総特集・初音ミク」より。
(鈴木慶一さんへのインタビュー「初音ミクがあぶりだすプロフェッショナル」より。聞き手は冨田明宏さん)
【鈴木慶一:やっぱり、「自分じゃ歌えないけど初音ミクだったら歌えるんだ」っていうことは、音楽をやろうと思ったときに非常に有効だと思う。バーチャルなアイドルというのは昔からあったと思うけど、それが歌も唄えるというところで完成されたなという感じだね。ただし、今後どうなっていくかというと、人間の性としてみんなそのうち飽きるだろうから、別の「人」がまた出てこないといけないんだろうね。初音ミクとは違う声を欲していくのかもしれない。
冨田明宏:ということは、ボーカル・ソフトのなかで――今までのバーチャルじゃないアイドルと同じように――たまたま初音ミクというアイドルが登場し、そのアイドルをみんなが情報ごと共有して楽曲をオリジナルとして発表しているのが今の状況ということですね。
鈴木:それに、自由自在に操れるということは、やっぱり人間にとって非常に快楽的だと思いますよ。
冨田:ある種フェティッシュを充たすというところもありますよね。
鈴木:どんな言葉でも歌うんだったら、いやらしい言葉って俺ならまず考えるしね(笑)。
冨田:透明人間になったら風呂場を覗くのと同じことですよね(笑)。
鈴木:大体のものはそういう風に、不純な動機から発達していくんです。
冨田:初音ミクは声優さんを使ったアニメ声ですし、だからそういったものが好きなオタクみたいな人たちが女性とのコミュニケーション不全を補うために使っているんじゃないかという意見もあるんですけど……
鈴木:どうだろう? そこまではちょっとわかんないけど、でも望むものが作れるわけだからそういった欲求も充たすかもしれない。かつての育成ゲームのようにね。ただ重要なのは不純な動機から始まったのに、感動して泣くほどの事になる。私は、育てた子供がうちはお金がないから、炭坑で働くってエンディングで泣いたよ。
ごく普通に、音楽を作る場面でも需要として、デモテープを作るようなときに初音ミクを使うことで女性のボーカリストを呼ぶお金がかからないというのは考えられるね。Digital Performerでもそういった機能――要するに男性が歌った声をソプラノにするとか、女性が歌った歌をバリトンにするとか――はあったけれど、ボーカロイドではボーカルに特化した分だけみんなが飛びついたんだろうな。
冨田:確かに、仮歌であれば音符どおりに唄ってくれさえすればいいんですものね。おそらくボーカロイドを製作する最初の意図というのもそこにあったと思うんですね。
鈴木:たぶんそうだろうね。それに別の意味を与える人たちが出てきて広がっていく……これが新しいものが生まれる瞬間なんです。
(中略)
冨田:おそらくそこから先のこととして、発表する場があるということとそれでご飯を食べていくのかというのは全く別の問題ですよね。今でも一夜にしてネット上でスターになる楽曲のクリエーターって確かに存在するんですけど、そういった人たちが音楽で飯を食っていこうと思っているのか、それともただ趣味の一環でやっていくのかというところで、けっこう趣味としてただ皆がワーっと盛り上がればいいってところもあると思うんです。
鈴木:そうかもしれないけど、でもやっぱり基本的にはどこかでお金が入ってこないと駄目なんじゃないかと思う。やはり、インターネット上はすべてタダっていう印象があるのは、これから再検証しなければいけないことではないかと思いますけどね。逆にプロフェッショナルとして音楽をやっていると、無料では配りにくい。まあ一曲ぐらいならいいかなっていう発想はあるだろうけど。
(中略)
冨田:でもあらためて考えると確かにレコード会社、音楽業界はだんだん時間をかけられなくなってきていますよね。仮歌であるとかボーカル録りというのは、本当は一番曲の中では生の部分というか肉の部分だったのが……
鈴木:そこにお金をかけなくてよくなったってことだよね。
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02月23日(月)
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