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活字中毒R。
by じっぽ
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■某大手コンビニエンスストア・チェーン店の「オーナー店長」の哀しい現実
『使い捨て店長』(佐藤治彦【編著】・洋泉社)より。

(この章の筆者・立川健四郎さんが、都内のイベント会場で開かれていた「チェーン店の独立開業相談会」に参加して聞いた話の一部です)

【最後に、大手コンビニエンスストア・チェーン店のブースで話を聞いてみた。
 その店舗も、数日の研修を受け、ある程度のお金を出せば、オーナー店長として店を持つことができる。
 実際に営業を始めるまでの研修は、研修施設に5泊6日の泊り込みで、経営の講習会と商品管理の説明を受けた後、実際に営業している直営店でのトレーニングを7日×2回で、合計20日。研修が終わる頃には自分の店が用意されていて、商品さえ入れれば、いつでも営業できる体制になっているのだという。
 オーナーになると決めたら、契約時に「チェーン加盟金」157万円と、「出資金」150万円を合わせた307万円を用意する。さらに、「開店準備金」として50万円ほどが必要だが、それだけで新しい店をオープンできるのだ。
 この「出資金」とは、店頭に置くべき商品の代金を一部払っておくということである。コンビニの棚には、平均すると全部で約300万円ほどの金額の商品が並べられているのだが、これはもちろん、本部から自動的に支給されるものではなく、日々入れ替えなければいけないもの。いわば毎日店長が買っている商品だ。だから、「出資金」の150万円とは、オープン時の商品の半分をあらかじめオーナーに買わせておくためのお金なのだ。
 また、「開店準備金」は、本人が研修中に、本部側が着々と店を作っておくための本部人員が動く人件費や営業許可料、酒税申請に使うお金やレジの釣り銭などに用いられる。念のため付け加えておくと、研修が始まってから、店がオープンして数ヶ月間は給料が入ってこないので、その期間の生活費は別途必要である。
 ちなみに、平均すると一店舗あたりの月の売り上げは1500万円くらいだという。粗利益が売り上げの30%ならば、450万円。そして、驚くべきことに、その450万円の利益のうち、チェーン店本部の取り分(ロイヤリティ)は半分。残りがオーナーの利益額なのだ。半分なんて暴利なのではないかと思うが、どうやら当たり前のことらしい。
 さて、オーナーとしては、ロイヤリティを引いた残りの225万円から、

・従業員数名の人件費
・見切り処分(期限切れによる廃棄)
・棚卸し時の不足分(万引きなどされた商品)
・水道光熱費
・消耗品代
・通信費
・清掃代(業者に頼む場合)

 これらをさらに引かなければならない。そこで残った金額でもまだオーナーひとりの所得にはならない。このチェーン店では、店舗経営者は、「オーナー」と「専従者(マネージャー)」という形で、二名を設けなければならないと決められており、それが契約の必須条件らしい。そのため、粗利益から全ての諸経費を引いたお金(=店長の取り分)をその二人で分け合うということになるようだ。担当者の話では、月の売り上げが1500万円の店舗の場合、店長の取り分は、二名合計で52万円くらいだという。コンビニ・チェーン店の多くは、オーナーに夫婦での独立開業を勧める。夫婦で52万円は決して高いとはいえないが、生活していけない数字ではない、という言い分である。
 ただし、これはあくまで概算であり、売り上げは1500万円より下回ることはもちろんあり得るし、むしろそちらのほうが多いだろう。その場合、生活はみるみる困窮する。また、オーナーが最初に手にする225万円のうち、「水道光熱費」「消耗品代」「通信費」「清掃代」は、どんなに売り上げが下がっても削ることはできない。そこでいきおい、「従業員の人件費」「見切り処分(期限切れによる廃棄)」「棚卸し時の不足分(万引きなどされた商品)」を切り詰めることに精を出さざるを得ないわけだ。
 しかし、万引きはなくならない。一説では、一店舗あたり年間100万円ほど、1ヶ月で8万円強の万引きが発生しているともいわれている。また、「廃棄」を出さないように納入品をぎりぎりに抑えようとすると、「商品が少ないから」とお客が離れる原因にもなる。そこで、自分が働くこととアルバイトを少なく効率的に使うことでの人件費削減に奔走するしかないのだ。

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07月10日(木)
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