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活字中毒R。
by じっぽ
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■『徹子の部屋』が、「一切編集をしない」3つの理由
『聞き上手は一日にしてならず』(永江朗著・新潮文庫)より。
(ライター・永江朗さんが、各界の「プロの聞き手」10人に「聞き方の秘訣」についてインタビューした本から。黒柳徹子さんの回の一部です)
【永江朗:『徹子の部屋』は世界でも珍しい長寿番組になりましたね。ひとりで司会するトーク番組としては世界最長だとか。長く続くからには、それだけ画面にはあらわれない苦労も多いと思います。収録の前には、どの程度、スタッフとミーティングをするんですか。
黒柳徹子:月曜、火曜で6本録っています。本当は5本でいいわけですけど、少しずつ余裕を見て。6本録れば、1ヶ月で4本のストックができます。何があるかわかりませんからね。ユニセフの仕事で海外に出かけるため、夏休みとして収録を2週お休みします。芝居の舞台稽古があって休むこともあります。毎週、金曜日に打ち合わせをするのですが、いまディレクターが14人ぐらいいまして、ゲストの方と、打ち合わせをしてきます。そして金曜日に私にいろいろ伝えてくれるわけです。この打ち合わせが長いんですね。6人分ですから、ゲストおひとりに1時間以上。ディレクターは6人かわります。通してやっても6時間ですが、そんなに根を詰めてはできないので、少し休憩したりお茶を飲んだり雑談したりします。3時から始まって、終わるのは夜の11時ぐらい。それからお弁当を食べながらお話しして、12時ぐらいまでかかります。
永江:ええっ! 9時間も打ち合わせですか。それはすごい。
黒柳:すごいでしょう(笑)。金曜日に終わらないときは、月曜日に収録後に残りを打ち合わせることもあるんですよ。だいたいおひとりについて、私の手書きのメモ用紙が12枚になるんですね。6人分ですから72枚になります。
永江:打ち合わせも重労働ですね。
黒柳:この日がいちばん大変ですね。ゲストにお会いするときは、とても楽です。だって、ご本人なんだから。
永江:あはは。たしかにそうです。しかし、そんなに打ち合わせが必要ですか。
黒柳:これは番組が始まるときの私の希望で、一切編集をしないことにしたんです。生放送と同じようにやる。そのためには、下調べが充分でないと話を飛ばせないんですよね。
永江:話を飛ばす、といいますと?
黒柳:いちいち細かくお話を聞いていたのでは時間が足りません。下調べでわかっていれば、例えば経歴の部分を視聴者の方には私の口から説明して、話を飛ばせますから。
永江:ディレクターはどんなふうに、どんなことを調べてきますか。
黒柳:大宅文庫などでその方のバックグラウンドを知る資料を集めます。本も雑誌も新聞も、その方に関わるあらゆるものです。それからご本人と会ってお話を伺います。もちろん私も資料を読むことがあります。作家のときは大変です。資料やディレクターがご本人から聞いたこと以外に、私もその方の作品を読んでいかなければなりませんから。全作品は無理でも、処女作、賞をとった代表的な作品、それから最近のもの。この3冊ぐらいは読んでおかないと。このごろは芸能人でも本を書いていらっしゃる方が多いので、そういう本は読んでおきます。
永江:なぜ編集しないことにしたんですか。
黒柳:編集して面白いところだけ集めてしまうと、その方がどういう方かわからないでしょう。だって同じ言葉でも、「うーん」と考えこんで返事したことかもしれないし、即答だったかもしれない。編集で「うーん」を切っちゃったら、その方がどういう方か伝わらないでしょう? ラジオなら何十秒も音がなかったら事故ですが、テレビは「うーん」と考えていらっしゃる間、顔をうつせます。だから編集をしないためにも、打ち合わせは重要です。何回も出ていただいている方でも、必ず毎回打ち合わせをするんですよ。うんと仲のいい方でも。しないのは永六輔さんと小沢昭一さんぐらい(笑)。それと、もうひとつ、毎日編集したら、絶対に雑になりますよね。
永江:そうなんですか。
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05月25日(日)
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