ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■「お笑いって絶対に、負けのない職業だと思えたんだよね」
『ビートたけしのオールナイトニッポン傑作選!』 (大田出版)より。

(この本に収録されている、浅草キッドの水道橋博士へのインタビューの一部です)

【インタビュアー:自分を『たけしのオールナイト』が救ってくれたのは、今振り返ると、どういうところが最も衝撃的だったからだと思います?

水道橋博士:これはあちこちで話していることだけど、放送を聴いていて、お笑いって絶対に、負けのない職業だと思えたんだよね。一生貧乏のまま終わっても、笑い飛ばせればいいわけだから。俺、それまでは竹中労に憧れて「ルポライターってかっこいいな」と思ってたんだけど、「部屋にひきこもってオナニーばっかりしている自分が何が正義かを問えるのか? 社会のために何か行動を起こせるのか? 起こせるはずがないじゃないか!」と思ってたの。もちろんお笑いの世界だって「クラスでひとことも話さない俺にできるはずがない」とは思うんだけど、でも、ひょっとしたら「こいつはしゃべらない男だぞ」ってことで笑いにつながることもあるだろうし、結果的にはまったく売れなかったとしても、それも笑い飛ばせるわけだし、どっち転んでも「しょうがねえなこいつは」って言葉で救われる。だからお笑いこそが最強だと思った。たけしさんがやったように、やりたい放題で、女を抱いてもいいわけだし。だって『たけしのオールナイトニッポン』のおねぇちゃんネタって、不倫をリアルタイムで実況してたようなもんじゃない? ああいう反社会的なことを公然とやっても、そこに笑いさえあれば、それは認められるんだって感じ。それまでは「正義」ってことが俺の中ですごく重要だったんだけど、正も邪もどちらも合わせて呑みこむ「お笑い」の中に突破口がある、そこにやっと出口を見つけた。お笑いは本当に最高の職業だな、って感じが『ビートたけしのオールナイトニッポン』にはあった。今でもたけしさんのそばに、十何年もずーっと一緒にいるんだけど、まるで売れない芸人とか、いっぱいいるわけじゃない? でも、彼らにも負けはないわけだしさ。そういうメッセージは、『たけしのオールナイトニッポン』の中にすごく入っていた。人生、勝ち負けじゃないんだよ、っていうことを教えてもらったのが一番大きいかな。あとは「くだらねぇな」とか「しょうがねぇな」っていう価値観。

(中略)

インタビュアー:博士は地方で鬱々としながら毎週『オールナイト』を聴いて「いつかは殿のもとに」と思ってたわけですよね。僕もそうですし、そういう少年たちって、当時日本中に何万人もいたと思うんです。だから博士は、その少年たちの中で、夢を実現した唯一の人、みたいなところがあると思うんです。

博士:そう思うね。「私は現在、地方でこういう生活をしていますが、当時『ビートたけしのオールナイトニッポン』を聴きながら、ニッポン放送の前に行こうか行くまいか何度も悩みました。博士は、もう一人の私なんです」というような内容のメールはよくもらうし。俺も、そっち側にいる自分を何度も想定したからね。きっといずれは故郷に帰って、貯めていた『オールナイト』のテープを毎晩聴きながら泣くんだろうな、って思ってたからさ。

インタビュアー:正直、当時のたけし軍団って、みんながみんな、博士ほどたけしさんに心酔してる人たちばかりでもなかったと思うんです。

博士:そうだね。俺を玉袋(筋太郎、「浅草キッド」の相方)とコンビを組んだのは、そこの連帯感だから。「俺らは本当にビートたけしのことが好きなんだ!」っていう。俺たちが人気者になりたいわけじゃない。単にビートたけしの一番近くにいたいだけっていう。ビートたけしの弟子じゃなかったら、俺、お笑い界に入ってないから。

インタビュアー:芸人になりたかったわけですらない?

博士:俺の場合、そう言っても過言じゃないんだよね。少なくとも自分にとっては「お笑い」というジャンルよりも「ビートたけし」のほうが存在として大きかったし、「ビートたけし」のほうが好きだったのは間違いないね。】

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02月23日(土)
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