ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■「ドリフの救護班」だった、もうひとつの『高木ブー伝説』
『絶望に効くクスリ Vol.9』(山田玲司著・小学館)より。
(山田玲司さんと各界で活躍している人々との対談を漫画化した作品の一部です。高木ブーさんの回より。)
【山田玲司:「何もできない人」のキャラクターをやっていても、ブーさんはそんな人じゃなかったわけですよね。
高木ブー:んー。まあひととおりの楽器もできて楽譜もかいてましたからね。まったくのバカじゃないですよ。ウクレレもギターも、ものすごく練習したしね…これは長さんだとうまく弾けないかなと思って、楽譜を書き替えたりね……
高木さんのマネージャーの山本さん:ブーさんのカバンっていうのがあるんですけどね…
山田:カバンですか?
山本:両サイドに6つのポケットがあって、それぞれに「針と糸」とか「ばんそうこう」とか入ってて…何かあったらみんながブーさんの所に行くんですよ。
山田:ドリフの救護班だったんですね…
高木:で…みんなが忘れ物とか楽屋にしていくんだけど、一番最後にチェックしていくのが俺なんだよね。そんなつもりはないんだけどさ。どーーーしてものろくて一番最後になっちゃうから、みんなのチェックするのにちょうどいいんだよ。
山田:それもまたブーさんのポジションなんですね。
高木:リーダーとか真ん中とかより2番とかがいいんだって。だから、ドリフの連中って、長さん以外は真ん中やるの上手くないよね…
山田:そーいえば、ドリフでやってる時は、みんなリラックスしてて楽しそうですもんね。
そんなブーさんにキャラクターを与えてあげようと長さんが考えたのが、雷様コントだった……
いつもワキに置かれて、スポットをあびることが少ないブーさんが、ふてぶてしく我が身の不満をいうコントだった。】
〜〜〜〜〜〜〜
子供の頃、僕たちをさんざん笑わせ、PTAからは目の敵にされたドリフターズ。そのメンバーのなかで、「誰かひとり要らない人を選べ」と言われたら、たぶん、最も票を集めるのは、高木ブーさんではないかと思います(と書きながら、仲本工事さんかも……という気もちょっとしてきたのですが、仲本さんの場合は、どちらかというと「目立たない」のであって、「要らない」という評価はされにくいかな……)。
しかしながら、この高木ブーさんのインタビューを読んでみると、ドリフターズというグループの中での高木さんの「役割」の重要性がすごく伝わってくるのです。
確かに、高木ブーは「主役」ではないし、「高木ブーがドリフの象徴」ではないのですけど、「高木ブーがいなけれど、ドリフは成り立っていかなかった」のですよね。
『8時だヨ!全員集合』の番組打ち切り後や、いかりや長介さんが亡くなられたあと、『全員集合』時代ドリフターズのことについて書かれた本をかなりたくさん読んだのですが、「舞台裏のドリフターズは、けっして『仲良しグループ』ではなかった」ことは事実のようです。
リーダーであり、大部分のコントを作っていた(そして、ギャラの取り分も多かった)いかりや長介さんと他のメンバーには「壁」があり、人気上昇とともに、メンバー間の確執も出てきました(「お笑い」の世界では、相方とプライベートでも仲良し、というほうがはるかに「特例」なのですけど)。
そんな中で、高木ブーさんは、まさにドリフターズの「救護班」として存在していたのだと思います。御本人も仰っておられるように、ミュージシャンとしての実力もあり(ドリフのメンバーで、今でもプロのミュージシャンとして活躍されているのは高木さんだけです)、けっして、「何もできない人」ではなかったにもかかわらず、高木さんは自分のポジションを頑なに守ってきました。
みんなが「自分が主役であること」を求める芸能界のなかで、「目立つことはできないけど、周りにそれとなく気配りをするという裏方」であることを受け入れ、そこに自分の存在価値を見出してきたという高木さんの存在は、まさに「異色」であり、個性派集団のドリフターズが長年続いてきたのも、高木さんの力が大きかったのではないでしょうか。
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02月09日(土)
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