ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■「日本の家屋は狭い」という誤解
『日本は世界で第何位?』(岡崎大五著・新潮新書)より。

【一軒あたりの平均床面積(u)(世界の統計2006)
1位 アメリカ  162
2位 ルクセンブルク  126
3位 スロベニア    114
4位 デンマーク    109
5位 日本       94.85
6位 オーストリア   92
7位 フランス     90
   トルコ      90
8位 イギリス     87
9位 チェコ      84
10位 ポルトガル    83


 以前、海外専門の駐在員をしていたころ、日本人の客からちょくちょくクレームをもらった。これはヨーロッパならではのクレームである。いわく、
「床にスーツケースを開けて広げられないほど部屋が狭いのよ!」
「日本人が小さいからって、わざと狭い部屋をあてがったりして」
「そりゃわたしたちは日本人だもの、たしかにうさぎ小屋に住んでいるけど、海外に来てまでこんな仕打ちはないんじゃないの?」
 と挙句には、目に涙をいっぱいにためる中年のご婦人までがいた。
 すべて誤解に満ち溢れている!
 ヨーロッパ人が広い部屋に住んでいると、どうして思い込んでいるのか?
 それはきっと、われわれ日本人がうさぎ小屋に住んでいると思っているからである。
 ここで上のデータを見てもらいたい。
 アメリカが断トツ1位になったのは、たぶん想像どおりだろうが、日本の5位はたぶん想像を超えている。
 添乗員をやっていたころ、「実は意外と日本の家屋は広いんですよ」と、このデータを見せて説明できていたなら、客の納得度もさらにアップしていたにちがいない。
 ではどうして日本人は、うさぎ小屋に住んでいることになっているのだろうか?
 資料によれば、ECで日本の報告書をつくったおりに、当初フランス語で日本人は「cage a lapins」に住んでいると報告されていた。これが英語に直訳といううか、誤訳されて、日本語で「うさぎ小屋」となったのである。しかし、「cage a lapins」というフランス語は、「都市型の集合住宅」といった意味もあり、これから連想されるのは、当時開発されていた高島平などの巨大集合住宅だった。
 これはぼくの推測に過ぎないが、ガイジン=デカイ=広い家に住む=アメリカ人、が転じて、ヨーロッパ人への誤解へとつながっていったのではないか。日本では、「欧米」と言われるくらい、ヨーロッパとアメリカがごっちゃに扱われることが多いのだ。
 でも現実は、ヨーロッパとアメリカは全然違っていたりするものである。
 たとえば、ヨーロッパのホテルは2つのタイプに分類される。ひとつはヨーロッパタイプ、もうひとつがアメリカタイプだ。
 ヨーロッパタイプのホテルに泊まったのなら、調度品や飾ってある絵画、古さを楽しみ、でもときに、部屋の狭さと水回りの悪さを我慢する必要がある。バスタブはあっても栓がないのはしょっちゅうなので、ガムテープを小巻きにして持っていくと助かる。日本のガムテープほど安価で質のよいものは、世界のどこでもあるものではなく、何度海外で、ガムテープ探しに走ったことか。そして間違いなく日本のガムテープは世界ナンバー1であると確信をした。
 かたやアメリカタイプのホテルは、こういった問題点がない代わりに、画一的で味わいに乏しく、また郊外に建てられていることが多いため、町歩きには不向きだ。よくあるチェーンホテルなど、アメリカタイプが多い。ただし、部屋は広く、ベッドも大きく、疲れを癒すにはもってこいである。】

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 そういえば、僕が新婚旅行のときに泊まった4軒のイタリアのホテルもみんな街中の良い立地条件ではあったものの、部屋が狭くてトランクを開ける場所にも困った記憶があるんですよね。浴槽が無くてシャワーのみ、というのも2軒ありましたし。
 あのときは、「新婚旅行なんだから、もっとグレードの高いホテルに泊まれば良かった……」とかなりガッカリした記憶があるのですが、あれがまさに「ヨーロッパタイプ」だったんですね。実際は、もっとお金を出せば、「広くて便利なホテル」に泊まれたのかもしれませんが。


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11月25日(日)
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