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活字中毒R。
by じっぽ
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■日本に現存している「世界最古の企業」
『ダ・カーポ』614号(マガジンハウス)の特集記事「とてつもない日本・世界一の技術!」より。

(対談「日本人はなぜ、技術者を尊重するのか?」の一部。出席者は赤池学さん(科学技術ジャーナリスト・著書に『自然に学ぶものづくり』)、野村進さん(ノンフィクションライター・著書に『コリアン世界の旅』)、橋本克彦さん(ノンフィクションライター・著書に『農が壊れる―われらの心もまた』)のお三方です。)

【司会者:日本人は「職人」や「匠」といった言葉が大好きで、技術者に対して特別の感情をもっています。日本人は、わが国の技術文化に誇りをもっていますね。なぜ、このような技術文化をもつようになったのか、考えてみたいと思います。

野村進:日本人にとって、モノ作りを大事にすること、技術を継承することを尊いと考える価値観は当たり前のように思われます。ですが、日本以外のアジアに行ってみると、必ずしもそうではないんですね。モノ作りを尊いと考えるのはむしろまれなことで、自分の手を汚して何かを作ることを、それほど尊重しない場合が多いのです。
 おもしろい例で言いますと、饅頭作って何百年という老舗が日本にはありますね。そのことを日本人は誇りに考えます。ところが、お隣の韓国では饅頭100年作ってもほとんど尊敬されないでしょう。饅頭で繁盛したら、次により高いステータスに向かう傾向があるんです。饅頭作って何百年が評価される国って、世界的に見てもまれなんじゃないかと思います。
 僕が『千年、働いてきました』(角川oneテーマ21)で書いたことは、日本には驚くほど老舗企業が多いということ。大阪には、飛鳥時代から寺社仏閣を建ててきた金剛組という創業1400年以上の”世界最古の企業”があります。他にも創業1300年の北陸の旅館、創業1200年以上の京都の和菓子屋などの老舗もある。日本には、創業100年以上の企業が10万以上あると推定されています。でも、日本以外のアジアでは、100年以上続いている店舗や企業はめったにない。韓国には一軒もありません。それだけ日本は、技術を継承しようとすることに価値を置いているのです。

司会者:野村さんは『千年、働いてきました』の中で、「職人のアジア」に対して、華僑などの「商人のアジア」があると書かれていました。日本はアジアの中でも稀有な「職人のアジア」の国であるということですね。

野村:「職人のアジア、商人のアジア」と二分法にしてしまいましたが、もしかしたら緒戦半島は「文人のアジア」かもしれませんね。儒教を説く儒者が、いちばん尊敬される国ですから。それは「商人のアジア」とも違います。
 それに比べると日本は、戦国武将が自分でもっこを担いで城を造ったりする国で、やはりだいぶ気風が違う。中国の皇帝が城造りに汗を流したり、朝鮮の両班(ヤンバン・特権支配階級)がモノ作りに励むなんてこと、ありえませんからね。

(中略)

野村:僕は日本の技術者の取材をしていて、多神教というか、日本型のアニミズム(万物に神が宿っているという考え方、信仰)をつくづく感じましたね。技術者は金属を擬人化するわけですよ。「金箔は人の心を読む」とか、「金属の方から自分の特質を訴えかけてくる」とかね。

橋本克彦:昔の人はモノとお話できたんでしょ(笑)。

野村:考えてみれば針供養なんかも日本ならではの風習かもしれませんね。さんざん使った針を供養するというその根っこには、日本型のアニミズムがあるように思います。

橋本:鉄とお話するというのも、鉄の精霊とお話しているのかもしれない。それに、仏像を彫る人は、木の中に埋もれているものをかき分けて仏像を出すんだって言うわけですね。大木を見て仏像を感じられるかどうかというのは、相当アニミズムっぽいよね。

(中略)

野村:徳川の体制が重要なポイントではないかと思うんです。徳川も形式的には儒教を取り入れて縛りをかけていたんですが、末端の技術に関しては非常に自由だったんですね。それが意外にたくましく今日まで生き延びている。

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09月25日(火)
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