ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
[10025553hit]

■周防正行監督が語る「刑事裁判の理不尽な実態」
「週刊SPA!2007/1/23号」(扶桑社)の「トーキングエクスプロージョン〜エッジな人々」第467回の映画監督・周防正行さんのインタビュー記事です。取材・文は編集企画室Over-All。

(映画『それでもボクはやってない』で日本の裁判制度を描いた周防正行監督へのインタビュー記事の一部です)

【インタビュアー:自白して調書に書かれたら、それが証拠となって、有罪がほぼ確定してしまうわけですね。

周防:調書の書き方自体もおかしいんですよ。供述調書というのは、なぜか一人称独白体で書くことになっている。文学的な修飾語を多用して、犯行の瞬間を生々しく表現しようとする。例えば「ナイフを刺したときに何か音がしなかったか」「いや、音って言われても……」「ズブズブっとか、そんな感じがしなかったか」「そう言われればそうかもしれませんが」なんて一問一答があったとすると、「右手に持ったナイフを相手の腹に突き立て力を入れると音を立てナイフがめり込んでいきました」なんて書かれちゃうわけ。そしてこれが、「体験したものでなければ語り得ない迫真性に満ちている」という有罪判決の理由につながっていくわけです。合理性のかけらもないのに、裁判ではこういう調書が最も重要な証拠として重宝されている。それが現実ですよ。

インタビュアー:取り調べのやり取りをそのまま速記するのが最も正確なはずなのに、それじゃいけないんですか。

周防:そういう調書はダメな調書。なぜなら「体験した者でなければ語り得ない迫真性」が感じられないから(笑)。

インタビュアー:それはつまり、最初から犯人だと決めつけて書いているってことじゃないですか。

周防:まったくひどい話ですよ。しかし検察官個人の問題ではなくて、システムとしてそうなっている。司法研修所の検察修習で、そういう調書の書き方を教えられるんですね。最初の頃は皆、当然ながら違和感を持つんです。「そうは言ってない。こっちが言わせたんだ」と抵抗を感じるんですよ。でも、きちんと有罪の証拠になるような立派な調書を書けなければ合格点は取れない。さらに検察官になって、そういう調書を日々作るうちに、まったく抵抗がなくなってしまう。同じ調子で被害者の供述調書も書かれてしまう。本当は痴漢の手なんか見ていなかったのかもしれないのに、「私のスカートの中に入っている手を見ました」と書かれちゃう可能性がある。

インタビュアー:あとは、その調書を裏付けるような証拠を適当に見繕う……ただの辻褄合わせにすぎないと思いますが。

周防:まさに辻褄合わせ。検察官にとって証拠とは、立派な調書を作るための材料にすぎないのかと思いますよ。しかも痴漢事件の裁判では、被害者供述を裏付ける物証なんて、そもそも必要とされてないんです。供述が一貫してさえいれば、その信用性を認めて有罪になる。被害者に事件直後の供述と後になってからの供述で食い違いがあったりしても、「事件直後は動揺していた」という理由で不問に付されて「概ね一貫している」なんて言い方をして済ます。

インタビュアー:なぜ裁判官はそんなものを、証拠もなしに信用するんでしょう。

周防:それは同じ国家機関である検察を信頼しているからでしょ。そもそも検事は揃えた証拠で有罪が取れると思うから起訴しているんです。それを裁判官も承知している。裁判官は、頭から被告人は悪いヤツだと決めつけているのか「込んだ電車で目の前に女性がいるのに、前を向いて乗り込むんですか? そんなことをしたら怪しまれると思いませんでしたか」などと、まるで前を向いたまま乗り込んだお前が悪い、とでも言わんばかりの質問を平気でする。ほとんど取り調べの続きにしか見えない。裁判官自身が有罪立証しようとしているかのようです。そんな状態だから、被告人はすべての疑問に合理的な回答ができない限り、無罪になることはまずない。

インタビュアー:少しでも疑問点があれば即アウトですか。被害者の供述は「概ね一貫している」でOKなのに。


[5]続きを読む

01月26日(金)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る