ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■「代理人」になりたがる人々
「週刊現代」(講談社)2007年1月6・13日合併号の高橋源一郎さんの連載エッセイ「おじさんは白馬に乗って」第30回より。
【「そうか」
タカハシさんは、手を叩いた。
代理人というと、プロ野球の契約交渉代理人か、家庭裁判所で離婚調停をする時の夫側・妻側、双方の代理をする弁護士を思い浮かべるのがふつうだ(タカハシさんは、特に、諸般の事情により、そう)。しかし、もっとはっきり、代理人と称している人たちを、我々は知っている。
先日亡くなった、丹波哲郎さんは、自ら「霊界の代理人」と名乗っていた。
最近でいえば、江原啓之さんも「霊界の代理人」だし、細木和子さんも、「霊界」というか、それに近い「運命界(?)」といったものの「代理人」だ。
あるのかないのかはっきりしないものの「代理人」をして、相手(一般大衆であろうか)と交渉を行うのだから、ボラスさんより、さらに自信たっぷりでなければ、とても務まらないだろう。
確かに、丹波さんや江原さんや細木さん以上に、自信たっぷりな人を、タカハシさんは、見かけたことがないのである。
あれほど自信に満ちた態度でなければ、代理人が務まらないとするなら、やはり自分には無理だ、とタカハシさんはためいきをついた。
ヨーロッパでは、ローマ教皇のことを「神の代理人」と呼んだ。まあ、丹波さんたちと同じ種族の人と考えても、それほど間違いはあるまい。
ブッシュ大統領も、なにか重要な発表を行う時には、「神のご加護を」というのが癖だった。きっと、ブッシュさんは、自分も「神の代理人」だと思いこんでいたのだろう。
だが、そういう人たちをタカハシさんは、笑うことができない。
「もう二度と悲惨な戦争を繰り返しません」と誓う時、人は、戦死した人たちの「代理人」になるし、「環境破壊を許さない」と抗議するとき、人は、気づかずに、これから生まれて来る人間の「代理人」の役目を務めている。
ボラスさんたちのように金儲けにはならなくとも、我々もまた、知らないうちに、なにかの「代理人」になっているかもしれないのである。】
〜〜〜〜〜〜〜
このエッセイのなかで高橋さんが書かれているところによると、松坂投手の代理人、スコット・ボラスさんというのは、【何十人もの専門スタッフを雇い、何十台もの衛星放送テレビで情報を集めるそうである。それだけではない。法律の専門家はもちろん、心理学やマーケッティングやトレーニング関係の専門家もいる。要するに、「ボラスさん」という名前の、一つの巨大企業なのである】という方なのだそうです。つまり、「代理人」というよりは、「スコット・ボラス・グループ」というマネージメント会社の代表が、あの人だということなのですね。そうなると、あれだけ高額なマネージメント料を要求し、球団側には、外野からみれば非常識だと感じてしまうくらいの高額契約を要求するのも理解できなくはありません。代理人ビジネスというのも、そんなにラクなものではないのでしょう。
実際、松坂投手とレッドソックスとの交渉において、ボラスさんは日本の野球ファンにとっては「理不尽な要求を出して松坂の夢を妨げるカネの亡者」のような存在に見えたのですが、彼のおかげで、松坂投手はものすごい高額年俸を貰えるにもかかわらず、「カネへのこだわりよりもメジャー挑戦という夢を選んだ男」というイメージを植えつけることに成功したのですから、「悪者」になってもらえるというだけでも、けっこう代理人には大きな存在意義があるものなのかもしれません。
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12月28日(木)
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