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活字中毒R。
by じっぽ
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■「文学新人賞」に応募する人々
「文学賞メッタ斬り!リターンズ」(大森望・豊崎由美共著・PARCO出版)
(大森望さん、豊崎由美さんの「メッタ斬り」コンビと島田雅彦さんの公開トークショー「文学賞に異変!?」の一部です。大森・豊崎両氏の文学賞の「下読み」についての話から)
【島田:1回に何本読むの?
豊崎:賞によって違いますけど、たとえば、わたしも前にやったことのある乱歩賞だと80本くらいは読むことになりますか? 一次選考で。
大森:そうですね。しかも、今のエンターテインメントの賞はほとんどが長編賞なんで、400枚とか500枚とかのを何十本も読むことになる。文芸誌の公募新人賞で1000とか2000とか応募が来るのは、大体100枚くらいの中短編ですよね。それとは全然違って、下読みはエンターテインメントのほうが大変なんです。まあ、全部読むかっていうと……。
豊崎:ざっと目を通せばわかるものも結構あるから。ただ、乱歩賞はちょっとわけが違って、わりあい本気度とレベルが高い人が応募してくるので、一目でわかる屑が少ないんですよ。小説現代新人賞の下読みを1回だけやったんですけど、こっちはすごかった。短編の賞なんで、読むこと自体はラクだったんですけど、もう二度とやりたくありません、すごく消耗するんで。なんで大森さんがあんなにたくさんの賞の下読みができるのか、わけがわからない。やっぱり心がないからだと思う(笑)。
大森:楽しいですよ、世の中にはいろんな人がいるなあって。実際、応募作を見てると、もう希望格差社会の縮図ですよ。東大出て現在はアルバイトの45歳とか、人生もいろいろ。最近で一番多いのは団塊の世代の男性。
島田;なるほど。今後もっと増えるんじゃない? だって、定年になるの、今年あたりからだもんね。
大森:そうですね。それと、筆歴に自分がいままでに出版した著書のタイトルを挙げる人の数がものすごく増えてる。新人賞応募者2000人のうち100人ぐらいはそうじゃないかな。版元はたいがい碧天舎とか文芸社とか新風舎とか。共同出版、協力出版ってやつです。要は自費出版ですけど、出版社がお金を出して書店の棚を買って、そこに自社刊行物を並べる、そういう商売が大流行してる。小説を出版したいという意欲はものすごく高いですね。これをなんとか有効活用する方法があれば。
豊崎:そういう人たちを一箇所に集めて、どこか収容所みたいなところに入れて、そのむやみやたらな表現欲というエネルギーを何かに有効利用できれば……。
島田:なんでそっち行くのよ。
大森:そういう人たちは50万、100万出して小説を本にしてるわけ。でも新人賞に応募するのはタダだから、なんでもかんでもどんどん送る。
豊崎:読む人の気持ちも知らないでね。
大森:歴史の長いミステリの賞だと、プロ作家の応募がやたらに多かったりするんですが、新設の派手な新人賞は、ほんとにずぶの素人の応募が多くて、何も知らないから電話でいちいち質問する。聞いた話だと、一番多かった質問は、「これもし当たったら、印税がもらえるんでしょうか」。
島田:宝くじじゃないんだから(笑)。
大森:当たるか外れるか。懸賞に応募する感覚の人が多い。
豊崎:でも2千何百本もあったら、そんなところもちょっとはありますよね、当たり外れみたいな。
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09月12日(火)
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