ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■『リアル鬼ごっこ』の魅力を奪うな!
「このミステリーがすごい!2005年度版」(宝島社)の「行列のできるミステリー相談所」より(構成・文:福井健太)

(読者の『リアル鬼ごっこ』(山田悠介・幻冬舎文庫)という作品を読んで「困惑」したのだが、プロの書評家は、このような作品をどう評価しているのか?という相談に対しての回答。回答者は、福井さんの他に、杉江松恋さんと米光一成さん。)

【司会:この件は福井さんからどうぞ。

福井:自費出版やインターネットで発表された小説が大手から刊行され、ベストセラーになるケースが増えています。これは好ましいことですが、そこで気になるのが、出版社のクオリティコントロールの問題。山田悠介の『リアル鬼ごっこ』は、2001年に文芸社から刊行され、2004年に幻冬舎文庫に入ったんですが……

米光:文芸社版が、いいんですよ!中学生の気持ちにもどって、友達がノートに描いた落書き漫画を読むようなノリで楽しむのがコツです。「最後の大きな大会では見事全国大会に出場」って、馬から落ちて落馬してかよッってツッコミながら読むんです。「真っ暗だった。森の中は本当に真っ暗で視界が一気に閉ざされた。目の前の物しか確認できず、目を少しでも離せば愛がどのあたりにいるのかも見失ってしまう。それ程、森の中は真っ暗なのだ」って、どんだけ真っ暗なんだッ(笑)。

福井:「二人が向かった先は地元で有名なスーパーに足を踏み入れた」……。

米光:「今一度、翼は辺りをキョロキョロさせながら」とか。辺りがキョロキョロするんですよ(笑)。十行に1個くらいの勢いで出てくるんですから、こういうのが。ここまでくると芸ですよ。

(中略)

福井:最初にインターネットで「こんなにひどいのがあるぞ」って話題になったんですよね。笑うためのネタとして言及された。それが影響力をもって、そこまでひどいのなら買おうという人が出てくる。そうすると現実に売れるわけで、そこから雪だるま式に売れて、大手出版社が連絡してくる。そのスパイラル現象はどうなんだろうという違和感があるんですよ。

米光:最後は「この話は人々の間とともに長く受け継がれていく」って、日本語がへっぽこなのがまたいい味だしてるんですが、ヒーローになっちゃうのも、ダメ学生願望ノリ。でも、残念なことに、そういったへっぽこなところが、文庫版では直ってるんです。

司会:読み上げてもらった部分は、文庫版ではどう直されてるんですか?

米光:「大会」の重複はなくなってるし、へっぽこで面白いところがほとんど直されてて、文庫版は、ただのつたない話になっちゃってるんですよ。中途半端なことしちゃダメですよね。】

〜〜〜〜〜〜〜

 ちなみに、上の引用は原文のママです。
 確かに「中途半端なことしちゃ、ダメ」かもしれない。
 この「リアル鬼ごっこ」は、とにかく「話題になっている」というのは聞いていたのですが、確かにこれは凄い!
 でも、僕はこの本が売れていた「本当の理由」というのを知らなくて、本屋でパラパラめくってみて、「どうしてこれが売れるんだろう?」と疑問に感じてもいたのです。この文章を読んで、確かに「これは凄い作品だなあ」ということがわかりました。まあ、まさか本屋さんで宣伝コピーとして、「拙い日本語で『2ちゃんねる』で話題の…」なんて書くわけにもいかないし、「これだけ売れているんだから、面白いんだろう」ということで買って悶絶してしまった人も多いのではないでしょうか…
 しかしながら、大勢の人が読めば「面白い!」と感動する人が出てきたり、「あれだけ売れているんだから、これはいい作品なんだよなあ」と自分に言い聞かせた人もけっこういるのかもしれませんね。


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01月12日(水)
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