ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■「ジダン頭突き事件」の真実
ただ、僕が思うに、その「暴言」の内容というのは、マテラッツィにとっても、ジダンにとっても、そんなに珍しい内容ではなかったような気がするのです。いくらマテラッツィが「トラブルメーカー」だからって、「ワールドカップ決勝用の、特別に酷い悪口のネタ」なんていうのを仕込んでいたとは思えませんから。そして、そういう「暴言」を吐いてきたのは、マテラッツィだけではないはずです。しかしながら、あの場面での、あの内容の「暴言」は、ジダンの「逆鱗」に触れてしまったのです。それは、マテラッツィにとっても「予想外」(あるいは、「予想以上」)だったことでしょう。
あの「ジダンの頭突き」が起こった「直接の原因」というのは、マテラッツィの「暴言」だったのかもしれませんが、おそらく、その「暴言」に過剰な反応を示してしまうくらい、ジダンは精神的にギリギリのところで闘っていたのでしょう。
逆に、「母親の入院」「恩師の死」「決勝の舞台」「引退試合」というような「背景」がなければ、同じことを言われたとしても、マテラッツィの「暴言」に対して、ジダンはああいう形での「復讐」を選ばなかったと思うのです。
マテラッツィからすれば、「きっかけはジダンが自分をバカにしたことだし、あのくらいの悪口で暴発するほうがおかしい」というのが、自然な感覚なんですよね、きっと。彼は、今までと同じような「暴言」を吐いていただけなのだから。そして、ジダンの母親の入院のことを知っていたら、いくらなんでも、「母親の悪口」は、言わなかったと思います(というか、そう思いたい)。
この「事件」には、本当にいろいろなことを考えさせられました。
今まで僕が他人に対して「なんでこんなことで怒るんだ?」と感じ、その人を「怒りっぽい、心の狭い人」だと判断していた事例のなかには、おそらく、その相手にも「そこで怒るだけの事情」があったことも多かったのではないか、と。もちろん、その相手が、その「事情」を僕に伝えてくれるとは限らないし、その「事情」そのものが、僕には関係のないこともあるでしょうけど、人は、自分が知らないところで、本当にたくさんの他人を傷つけているのです。
身内が病気で明日をも知れない状態であれば、苛立ったり、落ち込んでいるのは当然のことですし、長年付き合っていた恋人に振られた直後であれば、元気がなかったり、集中できないのも自然なことです。でも、僕たちはそこで、自分がしたことと相手のリアクションだけを比較して、「なんでこんなことで怒るんだ?」としか思えない。
僕たちが、車を猛スピードで飛ばしてスッキリした、なんて話しているのを偶然聞いて、交通事故で子供を亡くした人が、心の中で泣いて、憤っていることだって十分にありえるのに。
あまりいろいろな「背景」を考えすぎると、最後には「沈黙」しか残らなくなってしまいます。ただ、あの「退場劇」は、「どちらが悪い」というよりは、「人と人というのは、お互いにあんなふうにすれ違って、たいして悪意もないのに傷つけあって生きているのだ」ということの一例であるような気がしてなりません。
おそらく、彼らの人生には、ジダンがマテラッツィの立場だったこともあれば、マテラッティがジダンだったこともあったはずです。
僕たちも、あるときはジダンであり、あるときはマテラッツィなのですよ、きっと。
07月13日(木)
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