ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■『ゴルゴ13』が無口になっていった理由
 あまりにキャラクターが可愛くなりすぎて、スポーツマンガの主人公が圧倒的な力で相手を寄せ付けないなんて話や、恋愛マンガでくっついたふたりが、ずっと相思相愛で波風が立たないなんて話を描いてしまっては、読者のほうがあきれてしまうでしょうし。

 それでも、スポーツマンガや恋愛マンガであれば、最終的には作者が生んだキャラクターを幸せにすることが可能なのでしょうが、『ゴルゴ13』の場合、たしかに、『ゴルゴが正義の味方になってしまう』と作品そのものが終わってしまう。作者の気持ちを代弁する存在として、「あれもこれも喋らせたい」という衝動を抑えるためには、徹底的に無口なキャラクターにするしかないのかもしれません。

 『ブラック・ジャック』も、途中からは「いい人」描写が増えていきましたが、「手術料は3000万円!」という決めゼリフがないと、「らしくない」のも事実。手塚先生も、いまさらどんどん悪人方向にはもっていけないけれど、だからといって、普通の「いい人」になってしまってはマンガにならない、という迷いがあったように思われます。

 僕は『ゴルゴ13』の最初のほうの巻はあまり読んだことがないのですが(基本的に1話完結なので、途中の巻だけ読んでも違和感がないのは『ゴルゴ』の魅力のひとつだと思います)、ゴルゴが昔はもうちょっと饒舌だったというのは意外でした。
 作者のさいとう・たかをさんが、ゴルゴを「なんとかまっとうな人間にしてやれないものか」と悩めば悩むほど、「……」が増えていくというのは、漫画家の「生みの苦しみ」をよくあらわしているように思われます。
 読んでいる側としては、それでもなんとなく、「今度はちょっとプライベートなことが明かされたりするんじゃないか?」とか期待していたりもするものなのですけど。

 ちなみに、この本の巻末で、さいとう・たかをさんのことを、「戦友」である藤子・不二夫A先生は、こんなふうに仰っておられます。

【さいとう氏とは、どういうわけかウマがあった。僕とさいとう氏、石森氏(故・石ノ森章太郎)でずいぶんいろいろ飲み歩きました。銀座なんかで飲んでも、僕の場合は飲んじゃうと締め切りがあろうが何があろうが朝までってことになっちゃうんだけども、その点、さいとう氏はいさぎいいというか、ここまでという感じでぱっといなくなる。お酒で乱れたなんて姿を見たことは一度たりともない。何十年と一緒に飲んでますけど、それは今でも変わらないね。時分をきちんと律しているところは、とにかくかっこいいんですよ。まさに、ゴルゴ13そのまんまという感じがします。】

 お酒が嫌いじゃない人であれば、このさいとう先生の「いさぎよさ」が、いかに凄いことかお分かりいただけると思います。
 「一滴も飲めない」人ならともかく、酒好き、飲み好きなのに、飲んでもこれだけしっかり自分を律することができる人は、そうそういません。
 そう考えると、やっぱり、ゴルゴにはさいとう先生の遺伝子が組み込まれているのでしょうね。

08月28日(土)
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