ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■よしもとばななさんの「ある居酒屋での不快なできごと」
 僕はこのエピソードを読んで、「自分がこの店長だったら、どうしただろう?」あるいは、「この店長は、どうするのが『正解』だったのだろう?」と考え込んでしまいました。
 率直に言うと、この文章のなかで、後半の「もしも店長がもうちょっと頭がよかったら……」以降は、読んでいて、あまり気持ちが良いものではなかったんですよね。なんだか、「自分たちは特別な人間なんだから、特別扱いされてもいいんじゃない?」って思っているのだな、という気がして。
 でもまあ、そういう「よしもとさんたちのプライド」はさておき、こういう状況というのは、サービス業ではしばしば起こりうるわけで、店側としては、どう対応すれば良いのでしょうか?

 僕は最初にこれを読みながら、「まあ、けっこう注文してくれたみたいだし、そのデザートワイン1本くらいであれば、『見て見ぬふりをする』」というのが、原則論はさておき、「妥当」なのではないかとは思ったのです。
 馴染みの店であれば、お客が「こんなお酒が手に入ったんだけど」なんて持ち込みをしてくることは、けっして珍しいことではないでしょうし、店主もいちいち目くじらは立てないでしょう。
 そもそも、そこで「デザートワイン1本で店から失われる利益」と、「客に不快感を与える不利益」を天秤にかければ、どちらが長い目でみて得なのかは、あまり悩む必要もないレベルのわけで。

 しかしながら、この店長の言うことは「正論」ではあるんですよね。
 たしかに、ひと組の客の「持ち込み」を見逃せば、他の客が同じことをしてきたときに注意はできなくなります。「あの人たちはOKだったのになんで?」って言われたら、返す言葉はないでしょう。チェーン店の居酒屋であれば、「あの人たちは常連だから」なんて言う説明では、納得してもらえないはず。マニュアルでそうなっているということは、もしかしたら、「長い目でみれば、厳しい対応をとったほうが利益につながる」というデータがあるのかもしれません。

 ただ、この店長が融通がきかないというか、周りがみえていない人であることは確かです。
 僕が飲食店で厭な気分になる状況のひとつに、「内輪の事情が客に伝わること」があります。とくに、店長がバイトの店員や見習いの職人を叱りとばす怒声が聞こえてきたりすると、「金返せ!」って言いたくなるのです。
 赤の他人とはいえ、誰かが(少しは自分もかかわっていることで)怒られているなかで、食事を楽しむことが至難の業だということくらい誰にでもわかりそうなものなのに、意外とそういう怒声が聞こえてくる店ってあるんですよね……
 この店長は、たぶん、「正義の人」だというよりは、「何かにイライラしていて、そのはけ口として、この『正義』をふりかざしていたのではないかなあ。持ち込みへの注意はさておき、バイトの女の子への注意は、閉店後、あるいはもっとこっそりやったほうがよかったのでは。

 ところで、よしもとさんは、【いっしょにいた三十四歳の男の子が「まあ、当然といえば当然か」とつぶやいたのが気になった】そうなのですが、30代後半のさえない男である僕も、この話を聞いて、「当然といえば当然の対応ではあるな」とは感じたんですよね。たいがいの店では、そこまで徹底した対応はしないだろうけど、マナー違反ではあるから文句は言えないな、と。
 さて、読む人の世代によって、このエピソードへの感想は、そんなに違うものなのでしょうか?
 

08月08日(土)
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