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活字中毒R。
by じっぽ
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■「この業界で成功するには、一に体力、二に人柄、三四がなくて、五に才能」
 僕のいままでの経験からも、「最後に勝負を決めるのは体力と人柄」だというのは納得できるし、逆に「才能はあるのに、体力や人柄の問題で失敗してしまった人」もたくさん知っています。

 いや、順風満帆のときって、意外と「体力」や「人柄」ってどうでもよかったりするんですよ、その人に「能力」があれば。
 ところが、逆境に置かれたときには、「そういう生物としての基本的なポテンシャル」みたいなものって、すごくものをいってくるのです。

 以前、不祥事が発覚した雪印の社長が、記者たちにむかって「私は寝てないんだ!」と「逆ギレ」して大バッシングされていました。
 僕はあの映像を観るたびに、社長がちょっとかわいそうになったんですよね。
 病院で働いていると、「当直」という業務があります。
 これは、「日中仕事をしたあと、そのまま病院に泊まって時間外の救急患者に一晩中対応する(もちろん翌朝からも通常業務)」という仕事なのですが、一睡もしていないのに、朝の4時とか5時になっても患者さんが途切れない、という状況は「そういう仕事だと頭では理解していても」やっぱり辛いものなのです。
 イライラして集中力が途切れそうになったり、スタッフに対して声を少し荒げてしまったりすることもあります。
 それでも、「寝不足だからといって患者を断ったり、ミスをすることが許されない仕事」なんですよね。
 
 「頭はいい」のだけれども、そういう「肉体的なキツさ」に耐えられなかった人を、僕は何人も見てきましたし、自分自身、いまでもけっこう綱渡りだなあ、と感じています。

 あのときの雪印の社長は、本当に体力的にも精神的にもキツかったんだろうと思うんですよね。
 記者たちは「私たちも寝てないんだ!」と言い返していましたが、そりゃあ、同じく「寝ていない」のだとしても、一晩中周囲から責められ続けている人と、他者のミスを責めるだけの人の「疲労度」を比較するのは不公平ってものです。
 僕だって、ずっと呼ばれる心配もなくゲームやってていいのなら、徹夜だってそれほど苦にならない(ってことはないけど、当直で寝られないよりははるかにマシ)。
 でも、「他人からの評価」って、そういう「特別な状況」のときに定まってしまいがち。
 普段は「いい人」なのかもしれないし、そもそも、「普段からどうしようもない人」であれば、あれだけの大企業の社長にはなれなかったはず。
 それなのに、あの社長への世間のイメージは、「『私は寝てないんだ!』の人」になってしまいました。

 人間の「体力」と「精神力」っていうのは、それなりにリンクしていて、「疲れはてているとき」に他人に普段と同じように接することができるというのは、それだけですごいことです。
 かならずしも正比例とはいえないのでしょうが、やはり、体力がある人のほうが、過酷な仕事のときにも「キレないで普段と同じ仕事をできる」可能性は高い。

 鴻上さんは、【成功した社長の人生訓とか座右の銘とかを読むと、じつに平凡なことが書かれていることに気づきました】と書かれていますが、僕も学生時代にそういうのを読んで、「みんなつまんなことしか言わないなあ、『時間を必ず守る』って、小学生かよ!」と内心毒づいていたのです。
 ところが、こうして大人になってみると、「時間を必ず守る」って大変なことなんですよね。
 いつも好天に恵まれ、道路も渋滞せず、事故にも巻き込まれないなんてことはまずありえないし、お酒を飲んだ翌朝などは「起きたくない」。体調が悪い日だってあるでしょうし、気乗りしない約束には、ついつい足が重くなります。
 そういうときでも「時間を守る、守り続ける」というのは、日頃からよっぽど注意していないとできるものではありません。もちろん、体力があるに超したことはありません。偉くなればなるほど、スケジュールは肉体的にもハードになっていくものだから。

 「当たり前のことを、当たり前にやり続ける」ことができる人って、本当に、ごくごく一握りだけであり、「成功」する人というのは、その「難しさ」を理解できる人なのでしょう。

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12月05日(金)
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