ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■「コピーライターとしての資質を一瞬で見抜く」ための、たった一つの質問
 答える側としては、こんなふうに聞かれたら、普通は「誰でも知っている有名なコピー」ばかり挙げては「個性がない」と思われそうですし、だからといって、あまりに奇を衒ったコピーばかりを挙げると、単なる頭でっかちのマニアだという印象を与えるのではないかと悩ましいところですよね。
 こういう質問って、緊張しているときにいきなり聞かれると、けっこう頭が混乱してしまいそうです。
 単なる知識やセンスに限らず、「頭の回転の速さ」なんていうのもわかるのではないかなあ。

 ただし、質問する側に圧倒的な知識と確固たる「価値観」が確立されていないと、この質問にはあまり価値はありません。
 目の前の志望者が、ちょっと珍しいコピーを挙げてきた際に、それをどんなふうに評価するのか?
 例えば、誰かに「好きな映画10本」を挙げてもらったとして、その人がもし「自分が知らない映画」の名前を口にした場合、「そんな映画も知っているのか!」とプラスの評価をするのか、「そんなの知らん!」とマイナスの評価をするのか、あるいは、「その映画に関しては、プラスマイナスゼロ」にするのか?おそらく、一般的には「プラスマイナスゼロ」なのでしょうが、評価する側の知識が不足している場合、「才能を見抜けない」可能性が高くなってしまいます。

 この場合、「ほとんどすべてのこういう際に名前が挙がりそうな映画に関して、自分なりの評価を持っている」人でないと、本当にこの質問を「活かす」ことができないんですよね。
 おそらく、仲畑さんがこの質問を思いついたのは、「彼らが挙げるようなコピーであれば、ほとんど自分は知っているし、それぞれの評価も済んでいる」という自信があるからなのです。
 友達との会話だったら、ひとつでも「自分と趣味が合う映画」があれば、「あっ、それ、俺も好き!」って会話の糸口にすれば十分なのでしょうが、「雇う」となると、相手をなるべく客観的に「評価」し、「こいつは使えるか?」という判断をする必要がありますしね。

 そういえば、僕も学生時代、「30歳女性の腹痛の患者がいる。鑑別疾患を10個挙げろ」なんて教授に質問されて絶句していたものです。今なら、それぞれの疾患の発生頻度や危険性などを考慮した上で、すみやかに答えられる質問ではあるのですが、当時は「うーん、交通事故、打撲、虫垂炎!」などと苦しまぎれに返事をして、「どうしようもねえなこいつは」という視線を浴びせられていたのをよく覚えています。
 コピーライターの資質とはちょっと違うかもしれませんが、自分の中の情報にすばやく的確にアクセスでき、必要なものを必要なだけ取り出せる能力というのは、どんな仕事にも必要なのでしょう。

 この話、逆に言えば、「クリエイターになりたい人」は、聞かれたときにすぐに「自分の好きな○○」を10個くらいは挙げられるように、しかも、その10個が「自分のベストチョイス」になるように、日頃からトレーニングしておかなくてはダメだ、ってことなのですよね。


 では、「自分がいいと思う本を10冊挙げろ!」
 
 実際にやってみると、ものすごく難しいですよ、これ……

02月26日(火)
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