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活字中毒R。
by じっぽ
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■「お笑いって絶対に、負けのない職業だと思えたんだよね」
 『ビートたけしのオールナイトニッポン』は、1981年の1月から、1990年の12月まで、毎週木曜日の25時から27時まで放送されていた、まさに「伝説の深夜放送」です。
 僕にとっては、まさに「自分の10代とともにあった番組」なんですよね。
 こちらで紹介しているように、内容的にはかなり際どいというか、生真面目な少年だった僕にとっては「早口で何を言っているかよくわからず」「ちょっと悪のりしすぎているんじゃないか」と思われるようなところもあって、「その時間に起きていれば聴く」というくらいの存在ではあったのですが、それでも、2時間すごいペースで喋り続けていたたけしさんの口調を、今でもすぐに思い出すことができるのです。

 この水道橋博士のインタビューによると、博士は病気のために高校を留年し、自分の将来にも希望を持てず、「このまま高校を卒業して家業の紙問屋を継いで、普通に結婚して年取っていくんだろうなあ……」というようなことを考えて鬱々としていた時代に、『たけしのオールナイトニッポン』に出会い、衝撃を受けたのだそうです。
 これ読むと、博士がその時代から現在まで、「とにかくビートたけしが大好き」ということがよくわかります。
 人と人との関係というのは時間によって変わっていくのが当たり前ですが、今は同じ「芸人」というフィールドにいるにもかかわらず、これほど「変わらない関係」を維持しているというのもすごいですよね。
 普通だったら、少しは批判的になったり、敵愾心を持ったりしそうだもの。
 
 「お笑いって絶対に、負けのない職業だと思えたんだよね」という博士の言葉は、すごく印象的です。
 実際は、『M−1グランプリ』のような、「はっきりとしたガチンコ勝負の場」でなくても、「芸人」たちは、日常的に「今日はネタがウケた」とか「あいつらより俺たちのほうが面白かった(つまらなかった)」など、「勝ち負け」を意識している人がほとんどではないでしょうか。浅草キッドのお二人だって、そういう「競争意識」と全く無縁ではないはず。
 でも、「芸人として生きる」というのは、トータルでみれば、確かに、「全然ウケず、売れなくても、それはそれでひとつの『どうしようもない芸人の人生という芸』として成り立っている」のかもしれません。もちろん、芸人たちが、みんなそんなふうに考えているわけではないのでしょうけど。

 ただ、こういう「絶対に、負けのない職業」というのは、ある意味、「絶対的な、勝ちもない職業」という面もあるんですよね、きっと。
 「しゃべらない男」が笑いにつながることがある一方で、「クラス一面白いと言われ続けてきた、おしゃべりな男」が「全く笑ってもらえない」ことだってある世界。
 どんなネタだって、100%の人を笑わせ、楽しませることなんてできないし、観客から求められるネタに、自分で満足できることばかりではないはずです。人気やお金はひとつの「バロメーター」ではあるのでしょうが、もちろんそれが全てじゃない。
 「上」を望めばきりがないし、そもそも、何が「上」なのかよくわからない。
 今は人気絶頂でも、いつ飽きられるかわからないし、「次世代」はどんどん突き上げてくる。
 そう考えると、「売れている芸人」のほうが、むしろ、「ゴール」が見えなくて辛いときもありそうですよね。

 水道橋博士は、今でも「お笑いって絶対に、負けのない職業だ」と思っているのでしょうか?
 

02月23日(土)
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