ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■日本に現存している「世界最古の企業」
 江戸時代、静岡は各地の大工さんや漆職人、指物師なんかを集めるわけです。その伝統が今も生きていて、赤池さんのご本によると模型会社の70%が静岡にある。また静岡に村上開明堂という自動車のバックミラーを日本全体の約6割作っている会社があるんですが、ここはもともと鏡台を作っていたんですね実は鏡台も静岡の地場産業で、日本全体の約6割を静岡で作っていて、これも江戸時代からの技術の蓄積によるものです。鏡台がバックミラーやサイドミラーになるのですから、技術の継承や発展というのは奥が深くておもしろいですね。

司会者:日本の技術の奥深さは、先端技術と伝統技術が融合している点にあるように思いますね。携帯電話の中に金箔の技術が生かされていたり……。

赤池学:伝統工芸の世界も、立ち上がりの頃は絶対にハイテクだったんですよ。今だって超ハイテクの伝統工芸の漆器だってあるわけでしょ。伝統と呼ばれるモノの中に先端があるし、絶えずフロントランナーであろうとするモノ作りには必ず突出した技術があるわけで、先端同士というのは自由に無理なくつながっていく。最先端のモノは科学的合理的に設計されているわけですから。

野村:ある老舗の製造業の社長から聞いたんですが、中国がダメなのは技術がタテにもヨコにもつながらないからだと言うのです。技術を独り占めしてしまって、それを売り物にして渡り歩くわけです。日本の場合、技術がタテにつながる伝統があるし、ヨコにつながる文化があるんですね。技術はつながっていかないところでは発達しないんだよと言ってましたが、説得力がありましたね。】

参考リンク:社寺建築の『金剛組』

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 この『ダ・カーポ』の記事そのものが、「最近あんまり元気のない日本への応援」という論調でしたので、まあ、この対談の話を読んで、素直に「日本の技術って最高!」「中国はやっぱりダメ!」なんて反応するのもいかがなものか、とは思うんですけどね。
 『とてつもない日本』という新書を書いた麻生さんも福田さんに負けちゃいましたし。
 この対談のなかでは、「徳川時代の功績」が語られていますが、その時代に実際に生きていた人たちにとっては、「自分の『家業』を継ぐしかなかった時代」だっというのもひとつの「歴史的事実」だったはず。それは、技術の継承という意味ではメリットが大きかったのかもしれませんが、もし自分がそんな時代に生きていたら、やっぱりちょっと「本当は違う仕事をやりたかったなあ」と切実に感じていたのではないかと思います。
 いや、「職業選択の自由」が保障されている現代の日本に生きていても、そんなふうに感じることはありますしね。

 まあ、あまりに「ニッポンバンザイ!」みたいな記事なので、ひねくれた僕としては、こんなふうに懐疑的な見解を述べてしまいたくもなるのですが、日本という国の技術や文化に、それなりの「重み」があるというのは、まぎれもない事実です。
 数日前までカナダに行っていたのですが、カナダというのは、1867年に建国された国で、歴史はまだ140年ほど。各地で、「カナダの歴史的遺物」や「重要文化財」などを観たのですが、それらは軒並み「百数十年の歴史を持っている」ものでした。
 日本人であり、それこそ「数百年単位の文化財」をたくさん見てきた僕としては、正直、「そんなにもてはやすほど古くないよね、これ……」などと、少しだけガッカリしてしまったこともあったんですよね。もちろん、カナダにもすばらしい文化と自然があって、非常に楽しい旅ではあったのですけど。
 現地で案内してくれたガイドさんによると、「カナダ人には、日本という国の『歴史』に対して、とても興味と敬意を持っている人が多いんですよ」とのことでした。そりゃあ、「最古のホテル」が百数十年前に開業、なんて国の人が、「創業1300年の北陸の旅館」なんて話を聞けば、それだけで圧倒されてしまうのでしょう。


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09月25日(火)
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