ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■「帝王」カラヤンの「指揮で一番大事なこと」
岩城:その腕でいい音楽をやって、お客をつかみたいだけだと。結局、それで人が集まって、権力が湧いちゃうんだけどね。
阿川:腕一本で勝負してたんですね。
岩城:で、とっても小っちゃな話になるけど、僕も我が小っちゃな国ではちょっとだけ偉いでしょ。N響とかいくつかのオーケストラを持ってて、芸術院の会員になったとか。さぞやいろんな政治力やなんかを使ったんだろうって思ってる人はたくさんいますよ。でも、僕はやっぱり指揮をうまくやって、お客さんに認めてもらおうとしか思ってないの。だから、カラヤンが言ったことも本音だと思う。】
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クラシック界の「帝王」と呼ばれた男、ベルリン・フィルハーモニーの4代目の首席指揮者・ヘルベルト・フォン・カラヤンについての、岩城宏之さんの記憶。クラシック音楽にそんなに詳しくない僕ですら、カラヤンの名前は知っていますし、おそらく、日本でも小澤征爾さんと並んで、もっともよく名前を知られている指揮者なのではないでしょうか。
カラヤンは、その音楽的な才能を賞賛されていたのと同時に、その「政治力」を語られることも多い指揮者でした。中川右介さんが書かれた『カラヤンとフィルトヴェングラー』という本のなかには、【カラヤンは世界のクラシック音楽界の主要ポストを独占し、人事権を持ち、利権を握り、世俗的・実質的な意味で音楽界に君臨】【「有能なビジネスマン」とよく評された】と書かれています。
ここで岩城さんが紹介されている「帝王」カラヤンの実像は、「クラシック音楽界のドン」としてていうより、「ちょっと自慢したがりなひとりの指揮者」としてのものです。これを読んでいると、カラヤンは指揮者に必要な条件として、「運動神経と表現力」を重視していたのだな、ということがよくわかります。「運動神経」なんて、音楽とはあまり結びつかないもののような気もしなくはないのですけど。
そして、カラヤンは岩城さんに「キャリーとドライブ」の話をしています。これは、指揮の世界に限らず、人を動かすときの真理として応用できそうな話です。もっとも、言われてみればわかったような気分にはなるのですが、実際にどうすれば「キャリー」できるのかカラヤンは岩城さんに語ってはいませんし、たぶんそれは言葉で教えられるようなものでもないのでしょう。それができる人が「カリスマ」ということになるのでしょうね。
カラヤンが【「俺は、世間が俺がどれだけ政治的に立ち回って世界の音楽界を握ってると言っているか知ってる。それはある程度ホントだ。でも、俺はやっぱり(右腕を指して)これだけなんだ」】と言ったというエピソードには「帝王」の素顔が垣間見えて、なかなか興味深いものがあります。「政治力」ばかりが強調されるけれど、本人にとってはやはり、「素晴らしい指揮をすることこそが全ての源」だったのです。それをどういうふうに「運用」するかは、人それぞれなのでしょうけど。
しかし、カラヤンもああ見えて、世間の評判を彼なりに気にしていたというのは、ちょっと微笑ましいエピソードではありますよね。
03月12日(月)
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