ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■安野モヨコさんの「マンガを描くという『仕事』」
安野:うーん……マンガ家になってなければ、本当にダメ人間だったと思うから。たまたま、自分がマンガという道を見つけたから、それだけは頑張んなきゃしょうがないじゃん。】

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 『週刊モーニング』で連載中の大人気マンガ『働きマン』の作者・安野モヨコさん。ちなみに、『働きマン』の主人公・松方弘子について、安野さん自身は、「私とはまったくの別人で、自分だったらそうは言わないけれど、松方だったらこういう風に言うだろう、ってやっているだけ」なのだそうです。もっとも、そういうふうに「松方だったら…」と想像できるというのは、安野さんの中に「松方的なもの」があるのだということでもあるのでしょう。
 僕などからみれば、安野さんは「才能のカタマリ」みたいに思えるのですが、御本人は「本当の才能とは違う」と仰っておられます。おそらく、「自分が描きたいものを描きたいように描いて、それで世間に受け入れられるのが真の『才能』なのだ」と安野さんは考えておられるのだと思います。そういう意味では、「読者に受ける」ということにこだわってしまう安野さんのなかには、ほんの少し「アーティストとしての後ろめたさ」みたいなものがあるのかもしれません。まあ、実際にはそういう「受け入れられるための努力」が、人気マンガ家、安野モヨコを支えているようにも思えるのですが。

 しかしながら、安野さんの「マンガ家人生」というのも、けっして平坦なものではなくて、23歳の頃には、大きな挫折もあったみたいです。マンガ家というのは、次から次へと若い新人が出てくる世界ですから、「態度が悪くて、編集者の言うことを聞かず、作品も売れない」という23歳は、もう「崖っぷち」になってしまうのです。おまけに「専属契約」なんて足枷もあって、ヘタすれば飼い殺し。この部分を読んでいて、たぶん、当時の安野さんと同じような境遇にあって、「好きでマンガを描いているのだから」という意識に縛られて自分を曲げることができず、そのまま消えていったマンガ家というのがたくさんいたのだろうなあ、と僕は想像してしまいます。いや、考えてみれば編集者というのは「売れるマンガ」や「読者の好み」のことを若いマンガ家よりもよく知っているはずなのだし、鵜呑みにはしないまでも「アドバイスを真剣に受け入れようとする」ほうがメリットが大きいはずなのです。でも、実際のマンガ家たちは、それを「妥協」だと考えてしまいがち。逆に、なかなか売れなかったりすると、かえって意固地になってしまったりもするのだろうなあ、という気もしますし。

 結局は、安野さん自身の「自分はマンガを描いて生きていくしかないんだ」という「覚悟」こそが、今の成功をもたらしているのでしょう。僕も読んでいて、その悲壮さに胸を打たれてしまいました。
 でも、わかっているつもりでも「甘さ」を克服するっていうのは、本当に難しいことなんですよね。ついつい、「まあ、この仕事じゃなくても、なんとか食っていけるだろう」とか考えてしまいがちだし。
 安野さんでさえ、本当に「崖っぷち」に追い込まれ、その崖下を目の当たりにするまで、気がつかなかったのだものなあ……

11月06日(月)
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