ID:54909
堀井On-Line
by horii86
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■5431,人生で最も大切な技術 ー⑪ 〜苦しみを最大限に利用する
『幸福の探求―人生で最も大切な技術』マチウ リカール著
* 苦しみを最大限に利用する
死の究極の姿勢、「苦しみを最大限に利用する」には驚いた。
父がガン最期の頃、苦痛で頭を掻き毟っていた姿が目に焼きついている。
ところが、精神医がその中にあって、苦痛を利用して、心の解放を図る試み
をしていたとは、さすである・・ その時に、私に出来るだろうか?
≪ 次の文は、数カ月のあいだ激痛に苦しみ、死の床についていた
カナダの精神科医、ガイ・コルノーの書き残した書の引用である。
【「もういい。行かせてくれ」と眩いた。まったく和らぐことのない激痛
との戦いを止めにして、誰にでも来る静寂に心を向けた。
心を解放させる効果は、その後数日から数週の間にはっきりしてきた。
私は、無上の幸福感に突き進んでいったのである。巨大な愛の炎が自分の中で
燃え盛った。目を閉じるだけでーそれは長く満ち足りた一呼吸だったが、幸福
を享受することができた。続いて、人間一人一人、事象一つ一つで成り立つ
この宇宙に普遍的なアイデンティティがあり、それは愛そのものであることを
理解したのだった。愛の他なにもない…結局は、苦しみは外と内の間の区切り、
肉体と精神の区切り、自分と他者の区切りなどが、一切存在しないことを
発見させてくれるのである。】
苦しみの賢い利用の仕方で、人間は多くを学ぶことができる。
逆に、「仕方ないさ」という投げやりな考えに甘んじて過ごすのは、
心が大きく変化するチャンスと可能性を放棄するようなものである。
こうした変革の可能性は誰にでも備わっていて、苦しみが深刻な不幸に変わる
のを来然に防いでくれる。病気、憎悪、批判、不運などの障害に単に挫けない
だけで、事態に左右されない、とか、障害を永遠に乗り越えた、という意味に
受け取るのは間違い。それは、障害が精神の自由への道を塞がなくなった、
というレベルに過ぎない。苦しみに遭遇したくない、あるいは、苦しみの反応
を促進させるカタリスト(触媒)としておおいに利用したいと願うなら、恐れと
失望によって心を支配されるのを防がなければならない。八世紀の聖者、
シャーンティデーヴァは説いている。「治る道があるのに不満に思うことに
何の意味があるか。治らないとわかって不満に思うことに何の意味があるか」≫
▼ 5年前の会社整理時に、無我夢中に目先の事象をこなしている時、
何とも奇妙な感覚になっていた。その苦しさの中に、痛気持ち良さが沸き
出ていた。30年間、月一回、月次監査にきていた会計事務所の担当が、
『社長、楽しんでますね? 自分の立場が解ってないのでは?』と、呆れ顔
で言われたが・・ 万一の対策を創業当初からしていなければ、そんな余裕?
は無かったことも確かだが、一つずつ、押し寄せる二度とない経験をしている
日々が内側では輝いていた。あの卑しい視線の一つずつが、かつて自分が経験
したからこそ、その底が透けて見える快感もあった。この、心の内外、精神と
肉体、自分と他者の間が消えていた感覚である。 話しが少し軽くなった。
心の準備があれば、究極の苦痛は神の心に導いてくれるようだ。
娑婆は、それぞれが、それぞれの知識、経験しか見えないため成立っている。
・・・・・・
3230, 死は‘別れ’のとき
2010年01月28日(木)
昨日30年間近く毎年、行われている高校の同級会のメンバーの一人の
近藤さんの訃報が入ってきた。癌である。これで5人目、2割強が亡くなった。
ところで、癌から死に至る恐怖心を克明の記録を残した学者がいる。
岸本英夫である。もと東京大学の教授で宗教学の学者だった。彼は彼自身の臨終
の最後まで、死という問題を直視し続け、現実の死という問題に真向うから取り
組んだ人。癌でも最も恐ろしい悪性黒色腫という転移性の早いことで致命的な癌。
あと半年しか命の保証ができないと診断された岸本教授のショックを、こう書ク。
「私の内心は、絶えず血みどろの闘いだった。昼はまだ良い。夜が問題だった、
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01月28日(木)
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