ID:54909
堀井On-Line
by horii86
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■5274,クオリア再構築 ー①
ークオリア再構築〜島田雅彦:茂木健一郎、対談集ー
森の生活(現役)からサバンナ(御隠居)に移動して、過去を振り返ると、
分岐点の判断に対しての後悔が出てくる。現場では、取り返しのきかない
ことや、逆に適切な判断などが、思いやられる。 しかし、現在の私は、
その多くの過ち、成功の結果の現れ。だからこそ面白い。鋭い対話集である。
* 取り返しのつかないことやってしまう現場 ー島田雅彦
≪ たった一度の過ちが運命を大きく左右する。
タイムマシンで原始時代に出かけ、美しい花を一輪摘んで、現代に戻ったら、
世界は滅びていた、という話があるが、人生も同じだとしたら、身がすくむ。
過去を振り返る時、いくつもの転機があったことに思い至る。たとえば、
妻に浮気がばれた夫は、あの時、携帯電話を机の上に置いておかなかったら、
隠し通せたのに、と考える。大きな契約を逃したビジネスマンは、あの時、
話題を政治に振らなければよかった、と後悔する。事故に巻き込まれた人は、
あの時一本早い電車に乗っていれば、避けられた、と嘆く。
しかし、誰もが占い師ではないのだから、今この瞬間の行為があとで取り返し
のつかない事態になると予測することはできない。運命は刻刻変わるので、
その瞬間に正しい未来予測を立てても、五秒後には変わる。まさに、一歩、
一歩が命懸けである。占い師を過信するものは痛い目に遭う、と相場は
決まっている。細木数子もそれを認めるだろう。
ともあれ、時間は無情に先に進む。
迷っている暇はない。
人も歩けば、過ちを犯す。
だが、諦めを知る人には救いもある。
人生にはオプションがあって、挫折すなわち死ではない。
凡庸な人生を振り返る者より恥多き人生を振り返る者の方が回想は甘い。
輝ける栄光の人生には同じだけ恥に満ちている。英雄も凡人も今際の際
では平等だが、凡人にはこんな思いもある。
どうせ滅びるんだから、もっと過ちを犯しておくんだった。
ワルハラの城は炎上し、ライン川は氾濫する。
きっかけはスワッピングと裏切られた妻のヒステリー。
戦争も革命もそのきっかけは感情のもつれだったり、指導者の勘違いだったり。
英雄がしゃしゃり出ようが、凡人がのらくらしようが、歴史は痛くも痒くもない。
愚か者が英雄になり、売れない画家が独裁者になり、アル中の狂信者が大統領に
なり、田舎のモテない男が億万長者になるのだから、歴史は長い目で見れば、
万人に平等だ。≫
▼「輝ける栄光の人生には同じだけ恥に満ちている」が、
「暗い凡庸の人生にも、多くの光が満ちている」。凡庸の人生も、
輝ける人生も、振り返ってみれば、遠くから見れば、砂利の一つでしかない。
とはいえ、人生は生きているうちにある。
・・・・・・
4909,世界の美しさをひとつでも多く見つけたい ー3
2014年08月23日(土)
『世界の美しいさを一つでも多く見つけたい』石井光太著
* 「小さな神様から、小さな物語へ」
著者は、東北震災の地で、苦しんでいる被災民それぞれの「小さな物語」
を見つけ出す。起こってしまった現実に対し、自分を納得させる物語でしか
救われないのである。 ーその辺から(P222)よりー
≪ 「私は、夫が家にいた私を心配してもどってこようとして被災したのだと
思っでいます。夫は私を助けようと命を落としたのだと考えたいのです。
消防団員からすれば、「町のために死んだ」と考えた方が死を受け入れやすい
はずです。しかし、奥さんからすればそう考えるより、「自分を助けようと
死んだのだ」と思った方がどこか納得できる。「小さな物語」が落としどころ
となって前を向くことができるようになるのです。
―夫は町のために死んだのではない。自分を助けるために家に帰ろうとし
流されてしまったんだ。私は彼女がそう自分に言い聞かせながら生きていこう
とする姿を見て、こみ上げる感情を抑えきれなくなった。彼女にとって、
この物語がどれだけ大切なものであるか。それは闇に閉ざされた海に灯る灯台の
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08月23日(日)
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