ID:54909
堀井On-Line
by horii86
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■5884,本物の教養 −3
まだましか。
 ・・・・・・・
4048, 一時停止 ー6
2012年04月25日(水)
  * 人間は大文字で書かれた矛盾     
         「一時停止」 谷川俊太郎ー自選散文ー1955〜2010
≪ 唐突なようだが・シモーヌ・ヴェイユのことばを孫引きさせてもらう。
(精神がつきあたるもろもろの矛盾、それらのみが実在するものであり、
実在性の基準である。想像上のものには矛盾はない。矛盾とは必然性の
如何を試すものである)(存在の奥深くまで体験された矛盾、それは我々の
身も心も引き裂く。それが十字架である)自己弁護のためにひくにしては、
これらのことばがあまりに痛切であることは感じてもらえるだろう。
私は十字架にまで到達できる人間ではないけれども、せめて矛盾をかいま
見る地点にまでは行きたいと思う。矛盾の一方に身を置けば、たしかに
そこにも悲劇は待っていよう。作家の自殺のいくつかはそうした場所で
行われたのではないかと私は想像する。だが矛盾そのものを生きることは
―それは私には想像もつかない。ヴエイユの言う矛盾は、いわば大文字で
書かれた矛盾であり、人間そのものと言っていいと思うが、そのことが、
つまり究極には矛盾しかないのだということが、私に勇気を与える。
私の出会うもろもろの小さな矛盾も、最終的な矛盾と構造的に結ばれている
に違いない。ひとつの矛盾を解決し得たと思うとき、それがすでにもう
ひとつの矛盾のはじまりになっている。その無限地獄にこそあるいは
書くことに第一原因がひそんでいるのかもしれない。―その辺でやめておけ。
おまえにはそんなことまで論ずる資格はありはしない。どうしてそんなに
大仰でこわばった口しかきけないのだ。 おまえの内なる自然の荒廃は
その口のききかたからもあきらかだよ。見栄をはって、もっともらしい
愚痴を人に聞かせる暇はもうないそ。 (一九七二年) ≫
▼【 ヴェイユの(精神がつきあたるもろもろの矛盾、それらのみが実在
であり、実在性の基準である。想像上のものには矛盾はない。矛盾とは
必然性の如何を試すものである)】が良い。人生を総括すると矛盾の塊である。
しかし、その矛盾こそ実在であると知れば、人生を、そのまま受け取ることが
出来る。「矛盾は人間そのもの」とすれば、自分だけでなく他人を受け入れる
ことも出来よう。激しく生きるほど矛盾は大きくり、その重圧に潰されながら
生きていくことこそ人生の味わいを深くする。人間は矛盾だらけか〜

04月25日(火)
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