ID:54909
堀井On-Line
by horii86
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■5731,閑話小題 〜低反発マットと腰痛 〜1
東大の大教室には一般から募った1000人以上の参加者が詰めかけた。
彼の講義の特徴は、サンデル教授が提示した究極の事例研究を通して考え
させていく手法である。 始めのテーマは「正義とは何か」である。
まず正義を、彼は3つ上げてた。
* 幸福の最大化 (ベンサムの最大多数の最大幸福)
* 人間の尊厳に価値を置く (カントの主張)
* 美徳と共通善を育む (アリストテレス)
初めのテーマは、(18世紀に実際にあった事件=)難破した船乗りが
救助を待つ間、最も衰弱した1人を残りの3人が殺し、その肉を食べて飢えを
しのいだという実話を挙げ、「道徳的に許されるか」との問いを投げかける。
まず初めの学生は、「3人が生き延びるためには必要だった」「被害者の同意
があれば許される」という立場、しかし他の学生からは「どんな場合でも殺人は
殺人」「食人は許されない」という否定論が出てくる。色いろな議論の中から、
初め上げたベンサム、カント、アリストテレスの立場の哲学を導き出し、会場
の生徒たちを巻き込んでいく。サンデル教授は、学生たちの意見を踏まえた上で、
「最大多数の最大幸福を求める行為が望ましい」と主張した18〜19世紀
の政治哲学者ベンサムの功利主義が、常に正しいとは限らないことを示唆したり、
カントの立場も示唆したりする。
この授業で奇妙な既視感が浮かんできた。そう、私が度々、ここで書いてきた、
学生時代の人事管理の武澤ゼミでの放課後の週二回のゼミである。人事上の
トラブルを、ある一管理職が書きつらねた難問の文章を渡され、次回に、それに
ついて15〜6人が議論する。 初めはランダムに背後にある問題を抉り出して、
最善の解決策を考え出していく。次々と、問題に対する意見を搾り出すが、
そこには教授が難しそうな顔をして目たないように座っている。したがって甘い
指摘は許されない緊張感が張り詰めている。もちろん甘い意見は、その後の誰か
に指摘され潰される。2時間の議論を終えて部屋から出たときには、太陽が
黄色に見えるほどだった。そこで思い知らされたのは絶対的知識不足である。
一年前の欧州一ヶ月の旅行で破壊された固い壁が、さらに粉々になっていた。
時間をかけ考え考え考えること!人生それしかない。
11月23日(水)
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