ID:54909
堀井On-Line
by horii86
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■5320,閑話小題 ー曲線コースと直線コース
≪「知的な大人へのヒント」林望 著 より≫
* 料理はメディア、コミュニケーションのツール
【 食べるときは考えながら食べる。どうしておいしいんだろう、また、
こんなにまずいのはどういうわけだろうとかね。それはしかし、自分の中で
考えておけばいいわけで得意がってベラベラ言う必要はない。大切なことは
「よく味わう」こと。それがおいしかったら「うまいなあ、実にうまいなあ」
と言って、おいしそうな表情をして、食べる。この「食べる表現」という
ことが肝要です。 料理はメディアです。コミュニケーションのツールです。
本来は、主である自分がつくって客たる相手をもてなすというのが食べ物を
メディアとする、コミ二ケーションンのあり方です。昔は、人を招いてご馳走
することを「主(あるじ)もうけ」とも言いました。この言葉はそういう機微
ですね。つまり、主人がつくって客をもてなす、で、実際にそういう場合も
多くある。 そのほかに料理屋に行くという形の「主もうけ」もありますね。
それは、ほんとは自分でつくってもてなしたいけれど、その技術を持って
いないとか、自分よりずっと上手な人がいるというので、その板前さんに委嘱
して、自分のかわりに料理してもらっているわけです。 それが、料理屋で
もてなすという本来の意味です。つまり、なぜ、この店に招いたかというと、
ここの料理が美味しいので、これをぜひ食べて欲しいのに、全然料理の味
なんかそっちのけで、つまらないゴルフの話ばかりしていられたら、
主がわも、またその代理としての板前さんも、がっかりしてしまうでしょう。
そういうことを考えてもわかるように、料理というのは、コミュニケーション
のための手段、つまりメディアなんです。プロの料理人は料理に命を賭けて
いる人たちですから、いい板前さんは一生懸命考えて、大変な努力をして、
板長になっていく。そういう人が、多くの知恵を結集して、額に汗して
出してきたものを、知らん顔して食べていては、それは仁義にもとる。
薀蓄など語る必要はないのです。「美味しいな〜」だけでいいんです。】
▼ ファミレス、イタメシなどは、その店の個性があり、それに惹かれて
客は店に行く。その個性が店のメッセージになる。美味しいものを食べつく
してきたので、それほど美味しいものを食べたい欲求は少ない。それより、
店の醸し出す雰囲気が好きで、それを求めていく。それ自体、既にコミュニケ
が始っている。 隣の席で、私が注文した料理の薀蓄を自分の部下の女性に
得々と話している人がいたが、これほど不愉快なことはなかった。
家内も私も、美味しい料理の場合は、小さな声で、美味い美味いと自然に言う。
それが、更に美味しくなることを知っているからだ。チョットした店構え
の店で、売りにしているものが美味くないわけがない。ビジネスマンは、
その交渉の前後に食事を共にとる。 食事を通してメッセージが幾重にも
伝わる効果があるからだ。
10月08日(木)
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