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On the Production
by 井口健二
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■それでも私は生きていく、Village/ヴィレッジ、帰れない山、TAR/ター、サイド バイ サイド 隣にいる人
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『それでも私は生きていく』“Un beau matin”
2013年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドールに輝いた『アデ
ル、ブルーは熱い色』にて鮮烈な印象を残したレア・セドゥ
が主演し、現代パリに生きる女性の姿を描いて2022年カンヌ
でヨーロピアン・シネマ・レーベル賞を受賞した作品。
セドゥが演じるのは8歳の娘を抱えるシングルマザー。同時
通訳の仕事などで生活ぶりは問題ないようだが、元大学教授
で痴呆が始まっている父親の介護や、その生活の整理などで
何か虚しさを感じ始めている。
そんな折に彼女は1人の男性と再会する。彼は亡き夫の親友
で学術研究のために南極に行っていたという。そして研究者
の一家に育ったらしい彼女は、彼の人柄に惹かれて行くこと
になるが…。
脚本と監督は2013年3月10日題名紹介『グッバイ・ファース
トラブ』などのミア・ハンセン=ラヴ。本作では監督の希望
で35oフィルムによる撮影が行われており、撮影監督は監督
とは4度目のコラボレーションというドゥニ・ルノアールが
担当している。
共演は2007年7月紹介『エディット・ピアフ』でセザール賞
ノミネートのパスカル・グレゴリーと、2006年3月紹介『ぼ
くを葬る』で主演のメルヴィル・プポー。他にニコール・ガ
ルシア、カミーユ・ルバン・マルタン(子役)らが脇を固めて
いる。
物語は特に修羅場がある訳でもなく、むしろ主人公は感情を
表に出さない性格付けだから淡々と進んで行く。でもそれが
現実だろうし、そんな現実的な生活の一部が鮮やかに切り取
られた作品と言えそうだ。
僕自身は親の介護には立ち会わなかったからその現実は判ら
ないが、自分の年齢からするともはや介護される側に近い人
間だから、特に父親がどんどん老いて行く姿に色々と感じる
ところは多かったものだ。
そんな中で父親の蔵書を整理して行くシーンでは、「並んで
いる本が人生を表している」という台詞に、自分の蔵書はさ
して多くはないけれど、何か感慨を覚えるものもあった。そ
んな正に現実が巧みに描かれた作品とも言える。
演出では初めの方にちょっとケアレスなミスはあったが、全
体は落ち着いたトーンで、それが深みのあるフィルム撮影と
相まって、正にこれぞ映画という感じの作品に仕上げられて
いた。
公開は5月5日より、東京は新宿武蔵野館、シネスイッチ銀
座、UPLINK吉祥寺他にて全国順次ロードショウとなる。

『Village/ヴィレッジ』
2018年9月紹介『青の帰り道』などの藤井直人監督が、同作
にも出演の横浜流星を主演に招いて、因習に満ちた村社会の
現実を描いた作品。
物語の舞台は山の麓に田園の広がる村落。その村では伝統の
薪能も披露されている。そんな祭りの日に事件が起きる。村
民の男が自宅に放火して自殺したのだ。それから10数年後、
能舞台のある神社の裏山には巨大なごみ焼却場が建ち、田園
の広範囲はごみの集積場と化している。
そんな村で主人公は、リサイクルと称するごみの分別作業に
従事していたが、夜半に突然携帯が鳴り、集められた者たち
は恐らくは違法な産業廃棄物を集積場に埋め立てる仕事にも
従事していた。その仕事は過酷だが、生活のためには必要な
ものでもあった。
そんな村に、東京に出ていた1人の女性が帰ってくる。彼女
は東京には何もなかったと言って、過疎の村の村役場に勤め
始める。そんな彼女は主人公の幼馴染で、再会した彼女は村
が進める広報活動に主人公を誘う。それはごみ焼却場の意義
を世間に広めるというものだったが…。

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03月05日(日)
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