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On the Production
by 井口健二
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■ウクライナから平和を叫ぶ〜Peace to you All〜、こころの通訳者たち
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『ウクライナから平和を叫ぶ〜Peace to you All〜』
                   “Мир Вам”
旧東欧圏スロバキアのカメラマン・監督が、2015年〜16年の
ウクライナを取材したドキュメンタリー。
本作の製作年度は2016年になっているから、当然現在のロシ
ア侵攻を反映したものではない。従って地上戦の戦闘はある
もののミサイル攻撃の様なものも描かれない。それでも戦争
の恐ろしさは如実に伝わってくる作品だ。
そしてロシアとウクライナの言い分も、一時の感情論などに
動かされず、現在より判り易く伝わってくる感じもした。そ
こには「プーチン助けて」というようなロシア系住民の悲痛
な叫びも登場するものだ。
そして作中では、当初はロシア寄りだったかとも思える制作
者の態度が、徐々に変化して行くような印象も受ける。これ
こそが6年後にプーチンを暴挙に向かわせる萌芽があったの
ではないかとも思わせる。
ただ本作では、2013年の親ロシア派だったウクライナ大統領
による政権の崩壊以降の状況は捉えられているものの、許よ
りの何故ウクライナにロシア人がいるのかという歴史は描か
れない。
プーチンの言い分は「そこにロシア人がいて迫害されている
から助ける」というものだが、なぜそこにロシア人がいるの
か? 日本の観客にはその辺が一番判り難いのではないのか
な。それは現地の人には自明のことなのだろうけど。
とは言うものの、戦争の恐ろしさは本当に明確に伝わってく
る作品で、これが現状では市民も巻き込んでさらに多くの犠
牲者が出ている。それを想うと居ても立ってもいられなくな
るような作品だった。
公開は8月6日より、東京は渋谷のユーロスペース他で全国
順次ロードショウとなる。
なお本作は試写会が行われず、直接DVDが送付されて自宅
のパソコンで鑑賞したもので、スクリーンで観たらまた違う
印象になったのかもしれない。でもまずは観ることが重要な
作品のように思えたものだ。

『こころの通訳者たち』
東京都北区東田端に所在するユニヴァーサル映画館シネマ・
チュプキ・タバタが制作した聴覚障碍者と視覚障碍者を繋ぐ
ドキュメンタリー。
物語の舞台は、今回の試写会も行われたチュプキ・タバタ。
この映画館では旧岩波ホールでの上映作品など良心的な映画
を中心に興行が行われているようだが、同時に視覚障碍者の
ための音声ガイドが上映映画の全てに付けられている。
そんな映画館で、ある作品の上映が決まる。それは舞台演劇
に手話を付ける手話通訳の活動を取材したドキュメンタリー
だった。しかし手話の様子を如何にして音声ガイドで伝える
か。未知の挑戦が始まることになる。
基になるのは『ようこそ舞台手話通訳の世界へ』という短編
ドキュメンタリー。この作品では、2021年に愛知県豊橋市の
公共劇場で行われた『凛然グッドバイ』という演劇に手話通
訳を付けて行く過程が描かれている。
手話と言うとテレビのニュース画面などの隅にワイプで挿入
されているものを認識している程度だったが、ただ話されて
いる言葉を直訳しているだけのいわゆる手話通訳に対して、
舞台手話という存在が全く違うことに気づかされた。
そこでは通訳者は演者と共に演劇の一部として舞台上に登場
し、手話だけでなく全身を使って演者の感情や、台本に書か
れた台詞の行間にある余白なども表現して行く。しかもそれ
が演技の邪魔になってはいけない。
すでにここまででも感動的な作品だが、さらに本作ではそこ

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07月24日(日)
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