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On the Production
by 井口健二
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■Fukushima 50(燃えよスーリヤ、山中静夫氏、グリンゴ、マザーレス・B、私の知らない、エスケープ・R、グッドライアー、娘は戦場で、帰郷)
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『Fukushima 50』
2011年3月11日に発生した東日本大震災。その時の福島第一
原子力発電所とその関連施設、及びその周囲での出来事を描
いた真実に基づく作品。
映画の巻頭では福島原発を襲った未曾有の大津波がCGIで
再現され、その迫力の映像に圧倒される。しかし本当の物語
は、そこから始まる人間の戦いを描いたものだ。
その時、福島原発には50人の地元出身の作業員たちが働いて
いた。そして外部と遮断された発電所内で制御不能となった
原子炉の暴走を食い止めるための作業が続けられた。それは
人類史上、未だ嘗てない決死の作戦だった。
当時を体験した自分自身の中で、東日本大震災の記憶という
と町を襲い家や自動車や、さらには飛行機なども押し流す津
波の映像がほとんどだろう。そこに原発の爆発の映像がイン
サートされるが、それは被災者の姿に覆い隠される。
実際に震災の後には数多くのドキュメンタリーも発表された
が、その大半は被災者の苦労を描いたものであり、福島に絡
んでも町ごと避難した人たちの生活や残された田畑や動物た
ち、また風評被害などを訴えるものばかりだった。
それはドキュメンタリストたちが意図したものではないが、
現実の最大の危機は描くことができなかった。その実態は本
作によると、福島第一原発を放棄した場合の被害範囲は東京
を含む半径250q、東日本の壊滅を意味するものだった。
これを食い止めるべく50人の作業員が奮闘する訳だが、そこ
に突然の総理大臣の視察で緊急作業が阻害されたり、それを
ただ命令するだけの東京にいる会社幹部など、正にマンガと
しか思えない事態が続発してゆく。
いやはや、当時の状況を記憶していてこれらが本当にあった
ことだと認識していても、これはないでしょと言いたくなる
ような常識外れの事態が描かれる。でも言葉を繰り返すが、
これが真実なのだ。
出演は佐藤浩市、渡辺謙、吉岡秀隆、安田成美、緒形直人、
火野正平、平田満、萩原聖人、吉岡里帆、富田靖子、佐野史
郎、斎藤工、堀部圭亮、小倉久寛、石井正則、和田正人、三
浦誠己、田口トモロヲ、皆川猿時、金山一彦、金田明夫。
さらに小市慢太郎、矢島健一、段田安則、篠井英介、中村ゆ
り、ダンカン、泉谷しげる、ダニエル・カールら、今の日本
映画を代表するようなオールスターが顔を揃えている。
門田隆将の原作に基づく脚本は、2020年NHK大河『麒麟が
くる』を担当する前川洋一。監督は2019年2月24日題名紹介
『空母いぶき』などの若松節朗が担当した。
僕は以前から献血を趣味としていたのだが、2011年4月の頃
には成分献血で「血小板」の要請が多かったのを記憶してい
る。火傷の治療などに使用される「血小板」は保存期間が短
く、本来なら火災の発生などで緊急に要請されるものだが、
当時は頻繁に要請された。
それで疑問に感じて検索したら「血小板」が放射能障害の治
療にも使用されるとあった。当時は理由などは明かされず、
本作でも言及はされないので真相は判らないままだが、漠然
とした不安は感じたものだ。
それにしても当時の民主党政権の人気取りに走るおたおた振
りも情けないが、東電首脳の政権べったり無能な対応には、
恐怖すら感じ、それが全く責任を取っていない実情にも震撼
した。
まあこれが日本の現状を表しているということでは辛辣な作
品とも言えるものだ。
公開は2020年3月6日より、東京は丸の内ピカデリー、TOHO
シネマズ日比谷他で全国ロードショウとなる。

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12月15日(日)
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