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On the Production
by 井口健二
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■沖縄スパイ戦史、万引き家族、V.I.P. 修羅の獣たち(アーリーマン、ほたるの川、ニンジャバットマン、インサイド、クリミナル・タウン)
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『沖縄スパイ戦史』
アメリカ国立公文書記録管理局の保管所から発見される米軍
側の記録フィルムとは異なる側面から、沖縄の人々を襲った
本当の戦いを描いたドキュメンタリー。
題名を見た時に「スパイ」の意味が判らなかった。沖縄の戦
いは、アメリカ軍が圧倒的な兵力で蹂躙した印象で、局地的
には2017年4月2日題名紹介『ハクソー・リッジ』のような
ものはあったのだろうけど、そこにスパイが入るようなもの
ではなかったと思っていた。
しかし本作が描くのはアメリカ側ではなく、日本側のスパイ
の話。しかもそれは沖縄の戦いのためではなく、本土決戦を
見据えて、如何に戦うべきかを考察するための情報収集の戦
いだった。そしてそこには冷酷な全体主義への驚きの真実が
隠されていた、
作品は主に3つのテーマで展開される。
その1番目は少年を使った情報収集。上陸した米兵に菓子を
ねだるなどして近付き、兵員の人数や配置などを聞き出すと
いうもの。これは間違いなくスパイ行為で、子供を戦争に使
うというのは問題だが、中東やアフリカのように兵士として
使ったり、自爆テロよりはましかなと思わされた。
テーマの2番目は八重山諸島でのマラリアが蔓延する島への
疎開命令。ここに関しては以前に他のドキュメンタリーでも
見ていたが、その実態が住民の避難のためではなく、米軍が
上陸した時に彼らが情報源になるのを恐れたという話には震
撼した。これも情報戦だったのだ。
そして3番目は、島中に密かに陸軍中野学校の出身者が配置
されて、軍事機密の漏えいが監視されていたという事実。そ
こでは機密を知った者への殺害命令も出されていた。これは
米兵を殺すのではなく、自警団のような組織を使って同胞を
殺していたものだ。
ただし、中野学校の出身者に関しては多くが学校教員などの
名目で配置されており、彼らは住民にも慕われて、戦後には
その前非を悔いて島に桜の樹を贈り続けた人物もいたとされ
る。しかしソメイヨシノは沖縄気候には根付かなかったよう
だが…。
作品ではさらに、これらの行為を行った帝国陸軍の「軍機保
護法」が現在の「特定秘密保護法」に通じている事実や、現
在の「自衛隊法」が帝国陸軍のあり方を踏襲し、現在沖縄に
配備されているミサイル基地が戦前の本土防衛思想と同じ、
住民を無視した施策であることなども指摘する。
これらの事実も踏まえて、今自分のなすべきことも考えさせ
られる作品だ。
公開は7月28日より、東京はポレポレ東中野他にて全国順次
ロードショウとなる。

『万引き家族』
2017年7月9日題名紹介『三度目の殺人』などの是枝裕和監
督が、2018年・第71回カンヌ国際映画祭で日本映画では22年
ぶりとなる最高賞=パルムドールに輝いた作品。
登場するのは東京下町の高層マンションの谷間で廃屋のよう
な平屋に暮らす一家。一家の構成は老婆と中年の夫婦、それ
に若い女性と小学生の年齢だが就学していない少年。一家の
収入は老婆の年金と、恐らくは違法に取得している生活保護
費だが、食料などの足りない分は万引きで賄っている。その
主な担い手は少年だった。
そんな一家に新たな家族が加わる。それはアパートの1階の
ベランダに締め出されていた幼女を保護してしまうのだが、
幼女の親からは届け出がないらしく、警察も動かないまま時
が流れる。こうして幼女は一家の一員となり、貧しいながら
も理想郷のような生活が続くが…。ある切っ掛けから事態が
動き始める。

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05月20日(日)
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