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On the Production
by 井口健二
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■SUKITA 刻まれたアーティストたち(ベルリン・S、蝶の眠り、ラスト・W、北斎、獄友、ラッカ、ボストン S、スクエア、ダリダ、港町)
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』
デヴィッド・ボウイやYMO、布袋寅泰ら内外のアーチスト
の写真を撮り続けた写真家鋤田正義氏を描いたドキュメンタ
リー。
映画の始まりは、「T・レックス」のヴォーカル兼ギタリス
ト=マーク・ボランの終焉の地を訪れた鋤田と布袋の様子。
そこには鋤田撮影のボランのポートレイトが飾られており、
布袋は「この写真を見てギタリストに憧れるようになった」
と、自らのミュージシャンとしての起源を語る。
そして布袋のコンサートが続くのだが、ここでは演奏中の舞
台に対峙する写真家の姿がヴィデオで捉えられている。これ
はアーチストのパフォーマンス中に別の被写体を追うことで
あり、通常では全く考えられない映像だ。それが許されるく
らいの鋤田と布袋の関係性も描かれている。
そしてボランの撮影に始まって、その後には40年間に及んだ
ボウイとの交流。さらにはスタイリストの高橋靖子、ファッ
ションデザイナーの山本寛斎らとの関係など、1970年代初頭
のヨーロッパでの活躍も紹介される。この3人のコンビネー
ションがボウイを盛り上げて行く過程も素晴らしい。
実は昨年の今頃は、2017年3月5日題名紹介『Don't Blink
ロバート・フランクの写した時代』や3月26日題名紹介『パ
リが愛した写真家 ロベール・ドアノー 永遠の3秒』など、
写真家のドキュメンタリーを続けて見ていたが。その作品を
紹介しながら人物に迫るという手法は本作も同じだ。
しかし本作にはそれらと違う、何かが心にすっと入ってくる
ような心地良さを感じた。それは被写体が映画との関係も深
いボウイであったり、日本のアーティストであったりと、自
分に親しみがあるという点は有利だったのかもしれないが。
それ以上の人間性が本作には感じられたものだ。
また鋤田本人が幼少期からの写真家としての来歴を述べる語
りも素敵で、勿論それは才能を持てる人の話ではあるのだけ
れど、観客に勇気を与えて、迷っている人をそっと押してく
れるような人生観にも溢れたものになっている。
そして鋤田と映画との関係では、1971年寺山修司監督『書を
捨てよ町へ出よう』の撮影監督を務めたことや、是枝裕和作
品などのスチール。さらに1989年ジム・ジャームッシュ監督
『ミステリー・トレイン』に関してはジャームッシュ監督と
主演の永瀬正敏へのインタヴューなど。
とにかくすべてのカットにおいて僕の興味を引くシーンが連
続する作品だった。
公開は5月19日より、東京は新宿武蔵野館他で全国順次ロー
ドショウとなる。
この週は他に
『ベルリン・シンドローム』“Berlin Syndrome”
(2013年6月紹介『ウォーム・ボディーズ』などのテリーサ
・パーマー主演で、ドイツ旅行中のアメリカ人女性が酒場で
出会った男に監禁される恐怖を描いたメラニー・ジョーステ
ン原作ベストセラー小説の映画化。一目惚れで一夜を過ごし
た男の部屋。彼女が起きた時、男はすでに外出していたが、
部屋から出ようとすると外から鍵が掛けられていた。そこか
らの脱出劇がサスペンスフル且つスリリングに描かれる。監
督は2012年『さよなら、アドルフ』などのケイト・ショート
ランド。男の態度が徐々に変化して行く過程が不気味に描か
れ、外部とのコンタクトやその結末。さらに脱出劇の全貌が
丁寧且つ破綻も少なく描かれていると感じた。因に主演と同
じオーストラリア出身の女性監督は、前作でもドイツが舞台
だったようだが、何かの拘りがあるのだろうか。公開は4月
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03月04日(日)
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