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On the Production
by 井口健二
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■ゆれる人魚
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『ゆれる人魚』“Córki dancingu”
ディズニー作品『リトル・マーメイド』でもお馴染みハンス
・クリスチャン・アンデルセン原作『人魚姫』を現代風(?)
にアレンジしたポーランド映画。
物語の舞台は1980年代のワルシャワ。浜辺に遊びに来ていた
ミュージシャンのグループを海中から観た人魚姉妹の妹が、
グループの1人に目を留める。そして陸に上がった姉妹は乾
燥でひれを足に変え、ナイトクラブへと辿り着く。
そこで妹はミュージシャンに恋心を打ち明けようとするが、
彼の心は別の女性へと向いてしまう。そして彼の恋心を得ら
れなかった人魚の末路は…。大筋ではアンデルセンの原作に
沿っているが、多少味付けが異なる作品だ。
監督は、2007年に『アリア・ディーヴァ』という短編作品で
ニューヨーク映画祭など複数の映画祭で受賞している女流の
アグニェシュカ・スモチンスカによる長編デビュー作。脚本
も『アリア・ディーヴァ』に協力したロベルト・ボレスコが
担当いる。
出演は、2017年5月21日「フランス映画祭」で紹介『夜明け
の祈り』で修道女の1人を演じていたマルタ・マズレク、本
作の次の作品でチェコ・アカデミー賞の女優賞を受賞したミ
ハリーナ・オルシェンスカ。
他に2009年7月紹介『アンナと過ごした4日間』などのキン
ガ・プレイス、2014年『ドラキュラZERO』などに出演の
ヤーコブ・ジェルシャルらが脇を固めている。
映画祭に愛されるポーランド映画祭らしく、本作も2016年サ
ンダンス映画祭<ワールドシネマコンペティションドラマ部
門>審査員特別賞を始め、プレス資料によると世界の10箇所
以上の映画祭で受賞に輝いている。
とは言うものの、一般的な映画の感覚からするとどうなのか
な? 『リトル・マーメイド』のハリウッド的ハッピーエン
ドが原作の思想からかなり外れることは確かだが、本作の展
開も僕にはちょっと容認し切れない部分はあった。
でもまあ世界中の映画祭で受賞ということは、これが受けれ
られたのだろうし、それは認めるべきものなのだろう。それ
に1980年代を再現したというクラブの雰囲気は、それなりに
怪しげで逆に新鮮であったのかもしれない。
僕自身はそのクラブシーンに嵌ったことはないが、当時の映
画などで紹介された映像はこんなだったかなあと思わせるも
のではあった。しかし根本的な人魚の設定が…。こういうの
が最近の映画ファンには受けてしまうのかな?
2017年11月紹介『シェイプ・オブ・ウォーター』のギレルモ
・デル・トロは、見事に『人魚姫』を換骨奪胎してくれたと
思ったが。
公開は2018年2月10日より、東京は新宿シネマカリテ他で、
全国ロードショウとなる。

この週は他に
『素敵なダイナマイトスキャンダル』
(アダルト雑誌を数多く手掛けた編集者末井昭の自伝エッセ
イを原作とする作品。末井の母親は彼が幼い頃に隣家の息子
とダイナマイト心中をしたとのことで、そのトラウマを抱え
て18歳で田舎を飛び出し、工場に勤めながらデザイン学校に
通い、風俗店の看板描きを出発点に雑誌の編集者になったの
だそうだ。そんな男の人生が警察の取り締まりとの攻防戦な
ども絡めて描かれる。出演は柄本佑、前田敦子、三浦透子、
峯田和伸、松重豊、村上淳。そして尾野真千子が母親役を演
じる。脚本と監督は2017年8月20日題名紹介『南瓜とマヨネ
ーズ』などの冨永昌敬。警察との攻防戦は面白いが、母親の
死を整理し切れていない感じが痛々しい。公開は2018年3月
17日より、東京はテアトル新宿他で全国ロードショウ。)
『ベロニカとの記憶』“The Sense of an Ending”

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12月17日(日)
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