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On the Production
by 井口健二
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■ゆらり、ブレードランナー 2049
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『ゆらり』
劇団「TAIYO MAGIC FILM」主宰の西条みつとしが、自身の劇
団で2013年と2015年に上演して話題になったという同名戯曲
を自らの手で脚本化。劇場映画初監督の横尾初喜が映画化し
たSF的な要素のある作品。
物語の舞台は石川県能登半島に建つちょっと古い感じのペン
ション。そこで現在と未来と過去の3部構成で、ある宿命を
背負った家族のドラマが展開される。
最初の現代では、幼い女児のいる夫婦の主に妻がペンション
を経営し、若い女性従業員が働いている。そこに中年の男女
の宿泊客が訪れる。その男女は別々に部屋を取るが、男性の
態度が落ち着かない。その宿にはもう1人の女性客がいて、
彼女の勘違いから少しドタバタなドラマが描かれる。
続いてはちょっと未来のお話。第1部では女児だった女性が
シングルマザーとなって男児を育てている。そこで息子から
「神様はいるの?」と聞かれた母親は、手紙を入れると神様
からの返事が届くという、祖父譲りのポストを見せる。そし
て息子の入れた手紙に返事が届くが…。
最後はちょっと過去の出来事。ペンションは中年夫婦が経営
しており、そこに女優を目指し東京に行っていた娘が戻って
くる。しかし母親と娘の関係はぎくしゃくしているようだ。
その娘が謎のリモコンを見つけ、そのボタンを押すと同じ時
間が繰り返すことに気付く。
こうして時間が繰り返したことで娘は、自分が母親に取った
態度の愚かさを知り、それを直そうとするが…。リモコンに
は使用法と共に、「繰り返した時間は少しだけ変えることは
できるが、結局は元に戻ってしまう」という注意書きが記さ
れていた。
主演は、2013年4月紹介『俺俺』などの岡野真也と、2011年
1月紹介『心中天使』などの内山理名。他に戸次重幸、萩原
みのり、山中崇、遠藤久美子、平山浩行、渡辺いっけい、鶴
田真由らが脇を固めている。
第1部と第2部はそれなりの親子関係を描いたヒューマンな
ドラマが展開される。そこからの第3部はSFファンの目か
らするとちょっと唐突な感じもするが、タイムパラドックス
などは問題ないように作られている感じだ。この辺のSFテ
ーマの扱いは最近の劇作家はしっかりしている。
それに加えて本作では、第1部では女性従業員がポケットに
手を入れた時のかすかな音や、第2部では最後の手紙の執筆
者など、細かいところで正にドラマが展開されている。この
辺の演出も素敵に感じられる作品だった。
なおタイムパラドックスに関しては、上記の注意書きがポイ
ントになるが、SFファン的には逆の解釈が思い浮かぶとこ
ろも、よく考えられた作品と言えそうだ。中々巧みなSF作
品だった。
公開は11月4日より、東京は池袋シネマロサ他で、全国順次
ロードショウとなる。

『ブレードランナー 2049』“Blade Runner 2049”
1982年に公開され、当時のSFファン以外にも支持された名
作映画の続編が35年の時を経て誕生した。これは製作総指揮
リドリー・スコット、監督は2017年3月紹介『メッセージ』
のドゥニ・ヴィルヌーヴによる渾身の作品だ。
前作の舞台は2019年だったそうで、本作はその30年後。気象
の変化により海水面が上昇し、高い堤防で海洋から仕切られ
たロサンゼルスで物語は始まる。そして登場するのは自らが
レプリカントでありながら、レプリカントの逃亡者を追う捜
査官(ブレードランナー)のK。
そのKが逃亡レプリカントを処理した場所から別の白骨遺体
が発見され、その骨には人類とレプリカントの関係を揺るが
すある重大な痕跡があった。そして新たな指令がKに与えら
れる一方で、成人のまま誕生するレプリカントに植え付けら

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10月08日(日)
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