ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■第29回東京国際映画祭<コンペティション以外>
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※今回は、10月23日から11月3日まで行われていた第29回※
※東京国際映画祭で鑑賞した作品の中から紹介します。な※
※お、紙面の都合で紹介はコンパクトにし、物語の紹介は※
※最少限に留めたつもりですが、多少は書いている場合も※
※ありますので、読まれる方はご注意下さい。     ※
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『アジア三面鏡:リフレクションズ』
東京国際映画祭が独自に製作する映画の第1作。本作は特に
部門の分類なく上映されるようだ。
作品は、フィリピンのブリランテ・メンドーサ、日本の行定
勲、それにカンボジアのソト・クォーリーカー(2016年5月
紹介『シアター・プノンペン』)の3人の監督によるオムニ
バスで、各々40分ほどの短編が連続して上映される。
内容はそれぞれ独自のものとなっており、メンドーサ監督の
作品では北海道の「ばんえい競馬」とマニラの競馬場の対比
が面白かったかな。他に行定監督は引退してマレーシアで暮
らす老人の話。クォーリーカー監督は首都に架かる友好橋の
再建を巡る話を描いている。
でもそれぞれの上映時間では、特に語るほどの内容が描ける
ものでもなく、全体に物足りない。でも映画祭の主導でこの
ような作品が作られたこと自体が大事なのだろう。

《アジアの未来部門》

『ケチュンばあちゃん』“계춘할망”
済州島を舞台にしたベテラン海女とその孫娘の絆を描いた作
品。海女は幼い孫娘と2人暮らしだったが、市場でその孫娘
がいなくなってしまう。それから12年後、孫娘がひょっこり
帰ってくるのだが、孫娘はそれまでの生活について語ろうと
しなかった。
映画の中で話がどんどん広がって行き、収拾がつくのか心配
になったが、それが巧みに収斂し見事な結末を迎える。ただ
その転換点の描写でちょっと疑問は残るのだが、結論として
そんなことはどうでもよくなってしまうくらいに素敵な作品
だった。
本作が第3作というチャン監督はこれからも注目だ。

『ブルカの中の口紅』“Lipstick Under My Burkha”
インドの地方都市に暮らす4人の女性を追ったドラマ作品。
1人目は外出には黒のブルカを被らされる厳格な家に育った
女子大生。しかし通学の途中でブルカは隠し、大学では権利
主張のデモにも参加する。2人目は浮気癖が抜けない夫と暮
らす女性。3人目は政略結婚を迫られているが他にも恋人の
いる女性。そして4人目はもう若くはない女性。
最初はナレーション(?)の意味が判らず戸惑ったが、作品で
は男尊女卑の風潮が残る国に暮らす女性たちの厳しい日常が
明確に描かれる。それは各国への理解を深める意味で貴重な
作品だ。それがある程度明るく描かれているのも良かった。

『バードショット』“Birdshot”
保護鳥とされるワシを撃ってしまったために警察に追われる
ことになった少女の物語。物語は少女を中心に展開するが、
実は事件はもう一つ起きていて、その謎が少女の逃亡劇と並
行して徐々に解き明かされる。それは社会問題を背景にした
かなり重要な事件なのだが…。
二重構造の構成が中々面白い作品で観ている間は感心してい
たのだが、結末でもう一つの事件の謎は解けるもののそれが
解決には至らず、モヤモヤした気分が残る。もちろん映画と
しては成立しているし、その主張の意図は理解するが、この
クリフハンガーは痛々し過ぎる感じがした。

『雨にゆれる女』
ホウ・シャオシェン監督やジャ・ジャンクー監督などの作品
を手掛ける音楽家半野喜弘による映画監督デビュー作。
世間から身を隠すように暮らす男と、その男に預けられた謎
の女。そんな男女の心の交流が描かれて行く。先にマスコミ
試写も行われていて、そこでの評判も高かった作品。かなり
特異なシチュエーションだが、それなりの説得力もあるし、
結末の意外性も含めて物語は巧みに作られている。
この手の経歴の監督の作品は得てして奇矯なものが多いが、

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11月05日(土)
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